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1.麻痺性貝毒とは | |||||||||||||
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2.トゲクリガニから麻痺性貝毒 | ||||||||||||||||||||||||
福島県いわき市の小名浜港では、しばしば麻痺性貝毒の原因プランクトンであるAlexandrium tamarenseが出現し、二枚貝類がPSP成分を蓄積して毒化する。小名浜港で毒化が起こるのは、ほとんどの場合2月から4月にかけてであるが、筆者らは1999年の4月に潜水により各種魚介類を採取し、マウスアッセイ法によりその毒量を調べた。3) 結果を表1に示したが、プランクトンフィーダーである二枚貝類のほかに、肉食性の高いトゲクリガニ(図3)の肝膵臓部から二枚貝規制値の20倍にあたる80.0 MU/gの毒量を検出した。トゲクリガニは東京湾以北に分布するケガニの近縁種で、大きいものでは600 gを越え、食用対象種でもある。毒性が確認された肝膵臓部(図4)はいわゆる「かにみそ」として珍重される部位であるが、国内で一般に食用とされるカニ類からこのように高い毒性が検出されたのは初めてのことである。なお、毒性が認められた試料については、PSP成分確認のため、ポストカラム蛍光化検出による高速液体クロマトグラフィーによる分析を行い、7種のPSP成分を検出した(図5)。 | |||||||||||||||||||||||||
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3.二枚貝とトゲクリガニ毒化の関係 | |||||||||||||||
潜水での試料採取では調査できる頻度および試料数ともに限られることから、2001年からは特別採補の許可を得て、かご網により継続的に多数の試料を採取し、二枚貝であるムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)の毒化状況と比較した。2001年の調査結果を図6に示したが、マウスアッセイで分析した38試料のトゲクリガニ肝膵臓のうち、7割以上にあたる28試料が毒化しており、最大毒量値もムラサキイガイ可食部の21.5 MU/gに匹敵する18.2 MU/gであった。ただし、最大毒量値を示した試料を採取した同じ日に、同じ場所で採補した試料にも無毒のものがあり、毒量の個体差が大きいのが特徴であった。なお、付属肢の筋肉の毒性もマウスアッセイ法により調べたが、いずれも毒性は不検出であった。2002年以降もかご網による調査を続け、蓄積毒量に個体差が大きいことに変わりはないが、二枚貝の毒量が高い年はトゲクリガニでも毒化個体の割合が高く、最大蓄積毒量もムラサキイガイと同レベルに高くなることが判った。このことは、肉食性の高いトゲクリガニが、毒化した二枚貝などの餌料生物から食物連鎖を介して毒成分を蓄積したことを示唆する結果であり、小名浜港では二枚貝類と同様にトゲクリガニの毒化にも注意が必要であることを意味する。これらの結果をもとに2004年4月厚生労働省は、二枚貝等の捕食生物についても肝膵臓または可食部で4.0 MU/gを越える場合に食品衛生法に違反するものとして扱うことを決め、関係機関に通知した。 4) | ||||||||||||||||
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5.文献 | ||||||||||||
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