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クロマグロ全遺伝子配列情報
概要
 水産総合研究センター(FRA)では、平成21 年度より東京大学、九州大学および国立遺伝学研究所と共同で、世界初となる太平洋クロマグロ(以下 「クロマグロ」)の遺伝情報全体であるゲノムの全ての塩基配列の解読に取り組み、クロマグロの全ゲノムの解読に成功しました。この内容は、2013年6月18日発行の米国科学アカデミー紀要オンライン版に掲載されました。
プレスリリース (2013年7月19日)
 さらに近年、そのゲノム情報を活用し、クロマグロ26,433 個の遺伝子すべての発現量を一度に解析できるクロマグロDNA チップを開発しました。この内容は、国際学術雑誌Gene特集号(2016年2月1日号、Special issue: Marine Genomics)に掲載されました。
プレスリリース (2016年1月28日)
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公表論文
Yoji Nakamura, Kazuki Mori, Kenji Saitoh, Kenshiro Oshima, Miyuki Mekuchi, Takuma Sugaya, Yuya Shigenobu, Nobuhiko Ojima, Shigeru Muta, Atushi Fujiwara, Motoshige Yasuike, Ichiro Oohara, Hideki Hirakawa, Vishwajit Sur Chowdhury, Takanori Kobayashi, Kazuhiro Nakajima, Motohiko Sano, Tokio Wada, Kosuke Tashiro, Kazuho Ikeo, Masahira Hattori, Satoru Kuhara, Takashi Gojobori, and Kiyoshi Inouye (2013) Evolutionary changes of multiple visual pigment genes in the complete genome of Pacific bluefin tuna. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., Volume 110, Pages 11061–11066
(doi: 10.1073/pnas.1302051110)
Motoshige Yasuike, Atushi Fujiwara, Yoji Nakamura, Yuki Iwasaki, Issei Nishiki, Takuma Sugaya, Akio Shimizu, Motohiko Sano, Takanori Kobayashi, Mitsuru Ototake (2016) A functional genomics tool for the Pacific bluefin tuna: Development of a 44K oligonucleotide microarray from whole-genome sequencing data for global transcriptome analysis. Gene. Volume 576,Issue 2, Part 1, Pages 603–609
(doi: 10.1016/j.gene.2015.10.023)
要旨
太平洋クロマグロThunnus orientalis)(以下「クロマグロ」)は、北太平洋における最も重要な水産資源の一つです。近年資源状況の悪化が懸念されていますが、完全養殖の成功および大型陸上水槽での安定採卵技術の開発(平成26年 5月23日プレスリリース)、人工種苗生産技術の発展等により、天然資源への負担を軽減する安定的な養殖生産の実現に向けた研究が進んでいます。しかしながら、計画的な親魚の産卵制御、仔稚魚期の生残率の向上、餌料効率の改善、疾病対策、共食いや衝突死の防止など、天然資源に依存しない安定的な養殖生産のためには、未だ多くの課題が残されています。これらの課題を克服するためには、クロマグロの生物学的特性を分子レベルで詳細に把握することが必要です。
 水産総合研究センターを中心とした研究グループは、平成25年にクロマグロの全ゲノム情報の解読に成功し、合計26,433個の遺伝子の存在を予測しています(平成25年 7月19日プレスリリース)。そこで今回、このゲノム情報を活用し、クロマグロ26,433個の遺伝子の発現量を一度に解析できるクロマグロDNAチップを開発しました(平成28年 1月28日プレスリリース)。
 本論文では、開発したDNAチップの有効性を評価することを目的として、クロマグロの白血球を細菌感染時の反応を誘導する物質(LPS)およびウイルス感染時の反応を誘導する物質(poly I:C)で刺激したサンプル用いて、DNAチップによる遺伝子発現解析を行いました。その結果、LPS刺激区では、細菌感染により誘導される炎症反応に関連する遺伝子(サイトカインなど)の発現量が増加していました。一方、poly I:C刺激区では、抗ウイルス作用のあるインターフェロンと、その関連遺伝子の発現量が増加していました。この結果は、魚類の生体防御反応に関する一般的な知見と一致しており、今回開発したDNAチップが、クロマグロの遺伝子発現動態を的確に評価できることを示しています。開発したクロマグロDNAチップは、すべてのクロマグロ遺伝子が搭載されているので、今回の生体防御に関する研究のみならず、様々な分野の研究において利用することが可能です。今後、本技術を利用して、クロマグロにおける病気とストレス応答、成熟、初期発生、餌の栄養条件による影響等の生物学的な知見が蓄積されていくことが期待できます。
問い合わせ先
中央水産研究所 クロマグロゲノム研究担当者
FRA-bioinfo@ml.affrc.go.jp

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