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スサビノリゲノム塩基配列情報
概要
無菌化プロトプラストを用いたスサビノリPyropia yezoensis)の核ゲノムに関する論文が、国際学術雑誌 PLOS ONE電子版 2013年3月12日号に掲載されました。
プレスリリース (2013年3月13日)
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公表論文
Yoji Nakamura, Naobumi Sasaki, Masahiro Kobayashi, Nobuhiko Ojima, Motoshige Yasuike, Yuya Shigenobu, Masataka Satomi, Yoshiya Fukuma, Kouji Shiwaku, Atsumi Tsujimoto, Takanori Kobayashi, Ichiro Nakayama, Fuminari Ito, Kazuhiro Nakajima, Motohiko Sano, Tokio Wada, Satoru Kuhara, Kiyoshi Inouye, Takashi Gojobori, Kazuho Ikeo (2013): The First Symbiont-Free Genome Sequence of Marine Red Alga, Susabi-nori (Pyropia yezoensis). PLOS ONE
(doi: 10.1371/journal.pone.0057122)
要旨
海産紅藻類の一種である海苔の養殖は、世界でも最も産業規模が大きい海面養殖のひとつです。にもかかわらず、この大型藻類については、分子レベルでの生物学的特性が良く分かっていません。そこで、水産総合研究センターでは、次世代型シーケンサーを用いて、スサビノリPyropia yezoensis)のゲノム塩基配列を決定しました。
 まず、細胞表面に付着した細菌を取り除くために、スサビノリの葉状体を洗浄し、さらに酵素処理によってプロトプラストを得ました。これを材料に得られた核ゲノム配列は、コンティグの合計約4千3百万塩基対で、これまで推定されてきたゲノムサイズより一桁小さいサイズでした。また、ゲノム配列からは全部で10,327の遺伝子が予測され、そのうち約60%の遺伝子がイントロンを欠いており、それ以外の遺伝子も、ゲノムサイズの大きい藻類に比べて短いイントロンを持っていました。このことは、スサビノリのゲノムがコンパクトであるという本研究の知見を支持するものです。遺伝子配列の類似性検索の結果、35%にあたる3,611の遺伝子は機能が不明で、2,069の遺伝子が単細胞紅藻類Cyanidioschyzon merolaeと共通でした。
 紅藻類の赤色を特徴づけるものとしてフィコビリソームというタンパク質複合体が知られていますが、これに関係した集光性タンパク質をコードする遺伝子群がスサビノリ核遺伝子から新たに予測されました。これらの多くは紅藻類では今まで報告されたことがなく、紅藻類のゲノムに関する新しい発見です。特に、従来までは葉緑体ゲノムにコードされていると考えられていたフィコビリソーム分解遺伝子の類似遺伝子が核ゲノムからも見つかり、これが養殖スサビノリの色落ち対策における重要な研究対象になるかも知れません。以上の結果は、大型紅藻類の遺伝子と生物学的特性に関して、これまで説明できなかった特徴に手掛かりを与えるものであり、海産紅藻類のモデル生物としてスサビノリゲノムのゲノム情報が有用であることを示唆しています。
Nori_genome_3
スサビノリの無菌化プロトプラスト。平均の直径は約20μm
Nori_genome_2
スサビノリ葉状体
Nori_genome_1
日本沿岸で行われる海苔養殖
問い合わせ先
中央水産研究所 スサビノリゲノム研究担当者
FRA-bioinfo@ml.affrc.go.jp

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