マダイイリドウイルス病の発生条件と対策


[要約]
 マダイイリドウイルス病について疫学調査を行った結果、本症の発生は水温の上昇や種苗の導入時期、飼育密度に影響される傾向がみられた。また、感染実験では水平伝播の可能性やビタミンC等の投与による被害軽減効果が認められた。

三重県水産技術センター尾鷲分場

[連絡先] 05972-2-1438[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門]  病理[対象]  ウイルス[分類]  研究

[背景・ねらい]
 イリドウイルス病は海産魚の病気のなかでも最も被害の大きい病気の一つであるが、ウイルス病である本症に対しては現在のところ 治療法はなく、また本症の発生条件や感染経路等については不明な部分が多い。そこで本研究はでは、養殖マダイを対象として漁場環境・ 導入種苗・飼育管理と本症の発生との関連について疫学調査を行うとともに、感染実験により水平伝播の可能性や予防効果が期待できるい くつかの物質の投与効果を調べた。

[成果の内容・特徴]

  1. 本症は水温20℃は発生の目安になると考えられ、また病勢は25℃を越えると強くなり、その期間が長いほど被害は大きくなることが予 測される(図1)
  2. 遅い時期に導入された小さい種苗で本症が多発する傾向がみられた(表1)ことから、魚体が小さい ほど抵抗力が弱く、被害が大きくなることが推察される。
  3. 飼育密度が低いほど本症による被害が低く押さえられる傾向がみられた(図2)
  4. 健康魚を病魚と同じ水槽で飼育したところ、健康であった魚も本症に罹って死亡したことから、養殖現場においても本ウイルスの水平 伝播は十分起こりうるものと考えられる。
  5. ビタミンC等を前もって投与することで実験魚の死亡率低減効果が認められ、養殖現場でもこれらの物質の活用2より本症による被害 を軽減できる可能性が示唆された(図3)

[成果の活用面・留意点]

  1. 本症に対しては、種苗の早期導入、低密度飼育、ビタミンC等の投与による抗病性の強い魚づくりおよび魚病の早期処理による水平伝 播の防止などが予防や被害軽減につながるのではないかと考えられる。ただし、ビタミンC等の投与については、これらの物質がどのよう な作用機序で死亡率の低減につながるのかが明らかにされておらず、実用的な投与方法を確立するためにはこの点を明確にする必要がある。

[具体的データ]





[その他]研究課題名:特定魚類防疫緊急対策事業予算区分 :県単独研究期間 :平成4~6年研究担当者:田中真二、青木秀夫、清水康弘、今西禎雄、岡本 至発表論文等:養殖マダイのイリドウイルス感染症の発生条件と対策について、            三重県水産技術センター研究報告.第6号.55-61.平成8年
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