トラフグ産着卵の定量採集による再生産機構解明の試み


[要約]
 安乗沖の産卵場でトラフグ産着卵を定量採集し、採集卵数に基づく推定産卵指数を試算したところ、1996年は1995年のそれに比べて約8倍高かった。また、小底の幼魚漁獲量も約2倍多く、産卵数と幼魚量に正比例の関係がみられた。

三重県水産技術センター生産環境部門

[連絡先] 05995-3-0016[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門]  資源生態[対象]  フグ[分類]  研究

[背景・ねらい]
 伊勢湾・遠州灘・熊野灘海域に生息するトラフグは1989年にかつてない豊漁を記録したが、漁獲量は4,5年の周期で大きく変動し ている。三重県伊勢湾口部にトラフグ産卵場が形成されていることが分かったので、産着卵の定量採集調査を実施し、資源変動の解明を再 生産機構から試みる。

[成果の内容・特徴]

  1. 安乗沖約5Kmの海域に南北5Km、東西4Kmの調査範囲を設定し、その調査範囲内に1Km四方の区画20点を設けた。産着卵の採取は開口 幅が1mのソリネットを用いて行い、調査船あさま丸で各区画の中央部を一定地点当たり500m曳網した。
  2. 調査は4月から5月にかけて、1995年2回、1996年6回実施した。
  3. 調査時別産着卵採集区画画数と採集卵数は1995年2~5区画1~1900粒、1996年0~8区画0~7715粒であった。また、産卵数が採集 された地点の底質は粒径2mm以上の礫質であった。
  4. 1996年の産着卵はふ化状況から3群に分離された。
  5. 産卵指数(一区画当たり平均産着卵数に区画面積を乗じた値)は1996年228で1995年の28.4に比べて約8倍高かった。
  6. 小底の幼魚漁獲量は1996年12月末現在2.1トンで、前年同月比約2倍多かった。

[成果の活用面・留意点]

  1. ふ化仔魚は伊勢湾で幼稚魚期を過ごし、幼魚は秋季~冬季にかけて小型底曳網に混獲される。小底の漁獲量と翌年の延縄漁獲量(1+ 歳)との間には正の相関があり、さらに産卵親魚(2,3歳)は当産卵場に回帰すると推察されるので、当海域に生活圏を有する系群の存 在が想定される。これらのことから、産卵指数の経年変動を把握することにより、再生産のメカニズムが明らかにされれば、再生産を考慮 した資源管理も可能となる。

[具体的データ]




[その他]研究課題名:資源管理型漁業推進総合対策事業(広域回遊資源)予算区分 :補助事業研究期間 :1995年から1997年研究担当者:中島 博司、津本欣吾
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