相模湾の急潮予報の実用的な技術開発研究


[要約]
 急潮発生の要因として、黒潮変動に伴う沖合い水の流入、台風・低気圧通過に伴う急潮、内部潮汐等があげられた。また、急潮時の流速を観測で捉えた。

神奈川県水産総合研究所

[連絡先] 0468-82-2311[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門]  海洋構造[対象]  [分類]  普及

[背景・ねらい]
 相模湾の主要<漁業である定置網漁業は、沿岸に突然発生する急潮により、漁具の破損や流失など大被害を受けることがある。これに より漁業経営の悪化や漁業存続などが脅かされることもあり、急潮による被害を防止することが緊急の課題である。
 相模湾内の定置網漁場日報から、過去に起こった急潮の発生場所、被害状況を抽出し、流れ・水温などの海洋データ、風、気圧などの気 象データから、急潮を発生要因別に分類する。さらに、相模湾の数ヶ所で流れ、水温などの各層連続観測を実施し、黒潮変動や台風・低気 圧の通過などと急潮発生との関係、急潮時の流れや水温構造などの実態把握、変動の伝播など急潮の物理的な特徴を捉えるとともに、浮魚 礁で得られる流れ・水温データをモニターし、急潮予報を漁業者に通報し、急潮による被害防止に寄与する。

[成果の内容・特徴]

  1. 1985年1月~96年9月における相模湾の25ヶ統の大型定置網に被害をもたらした急潮などをその発生要因別に分類した結果、(1)黒潮変 動に伴う沖合水の急激な流入に伴う急潮、(2)台風が相模湾以西を通過時に起こる巨大波浪と急潮、(3)台風が相模湾沖を通過した直後に発 生する急潮、(4)内部潮汐波(二重潮)によるものの4つに分類された。
  2. ケース(1)(過去11年間に5回発生)、ケース(3)(過去11年間に6回発生)の被害が最も大きく、いずれも定置網が流失している。
  3. 1996年8月から12月にかけて、湾内の大島西水道、沖ノ山、城ヶ島沖、浮魚礁、平塚沖波浪観測塔、江之浦定置網、伊豆東岸の谷津定 置網で流れ、水温などの各層連続観測を実施したが、観測中の9月22日に台風17号が相模沖を通過した。気象庁の進路予報等からケース(3 )に相当したため、20日に急潮発生の予報を通報した。通過直後の23日夕方には米神定置網が流失した。この急潮の発生機構を浮魚礁、波浪 観測等、江之浦で得られた流れ、水温、風、および天気図から検討した。台風が沖合を通過したときに、相模湾上で強い北風、房総~鹿島 灘で強い北東風が吹続した。この風に伴うエクマン輸送により、風向に対し表層水はは右手(相模湾では伊豆半島側、房総~鹿島灘では岸 側)に堆積する。台風通過後に風が弱まると房総~鹿島灘に堆積した海水は大陸棚に補足され、波動となって相模湾を東から西に向かって 伝播するときに急潮が発生した可能性が高い。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究により、急潮発生時の流れを初めて観測した。また、急潮発生の予測が的中した。今後もブイにおける流れ・水温などの連続観 測を相模湾の数カ所で実施し、急潮の物理的な特性を把握し、予報の精度向上を図る。

[具体的データ]


[その他]研究課題名:予算区分 :研究期間 :研究担当者:発表論文等:
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