カンパチの種苗生産と成長
- [要約]
- カンパチを自然産卵させ、ふ化仔魚にS型シオミズツボムシ・アルテミア等を投与することにより、種苗生産が可能となった。沖合生け簀中で養成し2年間で尾叉長67.8cm、体重7.3Kgに成長した。以上の試験は小笠原で実施した。
東京都水産試験場小笠原水産センター
[連絡先] 03-3433-3253[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門] 飼育[対象] 他の浮魚[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- カンパチの養殖は現在外国産天然種苗に依存するなど、新たな病原生物の持ち込みや、供給の不安定性等の問題を抱えている。そこ
でカンパチ種苗生産の適地と考えられる小笠原で、採卵・種苗生産等の技術を開発し、併せて養殖の可能性を探る。
[成果の内容・特徴]
- 親魚には天然魚と人工生産魚を用い、天然魚は釣獲後1~4年間、人工生産魚は採卵後2~3年間二見湾内の生け簀で養成し親魚とし
た。餌料にはオキアミ・イカ・ムロアジ・モイスペレット等を用い、ビタミン剤を添加した。
- 平成2~8年に採卵を試みた。4~7月の産卵期に親魚を陸上80t水槽に移し、成熟促進処理を施さずに自然採卵を待った。
- これにより年間10~24回採卵することができた。1日当たり平均採卵数は37~118万粒、平均浮上卵率は65.8~89.0%、と良好であっ
た(表1)。
- 人工生産2歳魚からの採卵によって得られた浮上卵を1tポリカーボネイト水槽に1~3万粒づつ収容し、ふ化仔魚にはふ化後3日目
からS型シオミズツボムシを給餌し、成長とともにアルテミアと配合餌料を給餌した。飼育水温は飼育開始時には22~24℃、その後25℃ま
で加温した。この方法によりふ化後33~41日目には全長30mmを越えた。
- 平成6年4月に採卵・ふ化した稚魚を日齢34で沖出しし、二見浦内の生け簀で飼育した。ふ化後満1年で平均尾叉長46.8cm、平均体重
1,973g、満2年で平均尾叉長67.8cm、平均体重7,258gに成長した(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 小笠原島内の種苗生産民間業者に技術移転し、内地養殖業者へ安全な種苗を供給する。
- 小笠原でのカンパチ養殖を可能にする。
[具体的データ]
[その他]研究期間 :平成8年度(平成2年~8年)研究担当者:川辺勝俊発表論文等:小笠原諸島父島におけるカンパチの親魚養成と採卵、水産増殖、 44巻2号、1996
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