カツオ漁獲量予測手法の実用化
- [要約]
- 八丈島におけるカツオの漁獲量予測を行うにあたり、従来の重回帰式を求める方法に加えて、ニューラルネット法を併用し、複数モデルを採用することにより、予測精度の向上を図ることができた。
東京都水産試験場
[連絡先] 03-3433-3253[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議[専門] 資源評価[対象] かつお[分類] 調査
- [背景・ねらい]
- 八丈島において、カツオは、漁獲量の30%以上、漁獲金額の40%以上を占める主要な魚種であり、その好不漁は八丈島漁業全体を左
右する。この漁獲量を事前に予測することができれば、効率的な漁業経営を行う必要がある。
[成果の内容・特徴]
- 重回帰法とニューラルネット法による八丈島におけるカツオの漁獲量予測を試みた。
- 重回帰式に用いた変数は、4年前の漁獲量(Kg:X1)・4年前の4月の平均水温(℃:X2)・当年2月の平
均水温(℃:X3)・前年6月の漁獲量(Kg:X4)である。
- 95年には下記の回帰式を導いた。(Y:今年の水揚げ量)
Y=0.79596X1-21177.0X2+53313.6X3+9.09560X4-434650 - ニューラルネット法においては、変数を変えて2つのモデルを用いた。両モデルとも出力層には教師信号としてカツオ水揚量(Kg)を
使用した。
- 第1モデルには、回帰式に用いた4変数を、第2モデルには、4年前の八丈島近海の年間漁獲量・4年前の東北の主要11港(竿釣+旋
網)漁獲量・4年前の東北の肥満度・4年前の3月および4月の八丈島の平均定地水温・前年の八丈島近海の6月の水揚量・本年2月の八
丈島の平均定地水温・前年の八丈島近海の6月の水揚量・本年2月の八丈島の平均定地水温・本年漁期中(3~5月)の黒潮流路タイプ別
(N・A・B・C・D)日数の7項目12変数を用いた。
- 95年の水揚量は835tで予測が的中した。なお、95年は史上2番目の豊漁年であった。
- 予測手法には重回帰法がよく用いられ、入力値と出力値が線形相関が必要とされてきたが、自然界においてはこのような関係が成り立
つことは非常に少ない。ニューラルネットワーク法はこのような線形関係を必要としないため、有効な予測手法となりうると思われる。
[成果の活用面・留意点]
- 得られた予測値は、広報誌等により公表した。その漁期の漁獲量が事前に予測されることにより、漁業者の操業計画・漁業経営に資す
ることができる。
- ニューラルネット法の第2モデルにおいては、当年漁期(3~5月)の黒潮流路は前年12月の長期漁海況予報会議の予報案をもとに
推測している。使用変数が予測値であることによる不安定さは残る。
- 今後の実用化に向けて、取り組む変数のデータと教師信号との関係について検討し、計算に用いる変数を有効に選択することが必要で
ある。
[具体的データ]
![](nrifs96102-1.jpg)
![](nrifs96102-2.jpg)
[その他]研究課題名:予算区分 :研究期間 :研究担当者:発表論文等:
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