輸入冷凍すり身に見られた異臭成分


[要約]
 中米産のグチを原料とした冷凍すり身には漁獲時期によってヨードフォルム様臭気があり、製品に影響を与えた。この臭気が発生する時期の原料魚及び冷凍すり身から異臭成分としてブロモフェノール類を検出した。

中央水産研究所・加工流通部・食品特性研究室

[連絡先] 045-788-7663
[推進会議]水産利用加工研究推進全国会議
[専門]  加工・流通技術
[対象]  他の底魚
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 水産物の流通には冷蔵庫の完備、あるいはチルド輸送などの整備が進み、鮮度低下に起因する悪臭や異臭のクレームは減少している。それに代わり、水産物の輸入が増加したこともあって、水産生物が生きているときから体内に蓄積した成分に起因する異臭・悪臭のクレームが増えてきている。この、異臭・悪臭成分を検索し、可能であれば除臭法を開発することを目的とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 中米海域で漁獲されたグチを原料としたすり身からの製品にヨードフォルムあるいは消毒薬のような臭気があるとのクレームが出た。
  2. 原料魚内臓の含水アルコール抽出物から減圧低温水蒸気およびポーラスポリマービーズカラムを用いて臭気成分を濃縮し、60~350の質量範囲を検索した。その結果、ほとんどのピークは炭化水素や低級脂肪酸の化合物であったが、保持時間8.725分のピークはジブロモフェノールと同定できた(図参照)
  3. 常圧水蒸気蒸留とポーラスポリマービーズカラムによる大量の試料からの発揮成分濃縮によって、原料魚及びすり身からオルト及びパラブロモ、2,4-および2,6-ジブロモm2,4,6-トリブロモのフェノールが検出され(表参照)、これらのブロモフェノール類がヨードフォルム様臭気の原因と推定した。このうち文献値からもっとも閾値の小さい2,6-ジブロモノフェノールを主要な原因物質と推定した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 異臭成分の濃縮に、ポーラスポリマービーズが効果的であった。
  2. ブロモフェノールの除去に界面活性剤が有効であることが判明したので、食品添加物として許可されているシュガーエステル等について検討する必要がある。

[具体的データ]



[その他]
研究課題名:水産製品の臭気に及ぼす原料魚中の特異成分の解明-カリフォルニア湾産グチからのブロモフェノールの検出-
予算区分 :経常
研究期間 :平成6~8年度
研究担当者:飯田遙、山下由美子、岡田稔(鈴廣蒲鉾株式会社)
発表論文等:カリフォルニア湾産グチからのブロモフェノールの検出、中央水研報、第9号、1~10(1997)
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