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1.バレンシアとカステリョンの町 今回のシンポジウムはInstitute of Aquaculture Torre de Sal、Spanish Council for Scientific Research、及びIberian Association of Comparative Endocrinologyの共催で、JaumeI大学のキャステロンキャンパスで開かれました。 カステリョンは大学の他には観光名所等の特筆すべきところは何もないような 町で、日本で手に入るガイドブック類を見てもほとんど情報が得られません。 もちろん日本からの直通航空便もないので、パリ経由でバレンシアまで飛行 機で行き、そこから電車でカステリョンに向かうことにしました。途中の飛行機で内水面 利用部の生田博士を見つけ、彼も同じホテルに泊まる予定だというのでこれ幸いと以後行動を共にすることにしました。
中央市場も大変活気があって面白いところでした。やはり興味をそそられる のは魚市場で、日本以上に魚介類の種類が豊富なのには驚きました。タイ(ヨ ー ロッパヘダイ)、カツオマグロ類、カンパチ、サバ、イワシ類、ヒラメカレイ類(ターボット等)、スズキ類(European seabass)、タラ類(Hake等)、ボラ等の一般的な魚から、エイ、ヒメジ、アンコウ、マテ貝、シャコ等のやや 特殊な魚介類、さらにはカナガシラ、ミシマオコゼ、アカタチ、カメノテ、カラッパ等、どうやって料理するのだろうと思うものまで色々とありました。(写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9)イカ類も日本のソデイカに匹敵するような巨大なものからホ タルイカ程度しかない小さなものまで様々であり、タコも何種類か置いてあっ て、このあたりで魚介類が大変好まれていることが良く分かります。チーズやハム、ソーセージなど畜産物の種類も豊富でしたが、どこの店でも生ハムの巨大な塊を何本と、時には何十本もつるしてあるのと、(写真10)ウサギを よく食べるようで、皮をむかれ、肝臓以外の内臓を除いたウサギが何匹も置かれているのが印象的でした。
カステリョンまではちょうど日本の横須賀線に相当するような中距離電車に乗り(写真11)、約1時間で到着しました。この町自体は小さなもので、町の中心部の概容概要?などは生田博士としばらく町歩きをしている間に覚えてしまいました。スペインもマドリッド等の大都市は治安が悪いらしく、バルセロナ経由で来た人も危ない目に遭いそうになったと言うことですが、バレンシアやカステリョンはいたってのんびりしたところでラテン風の気楽さにあふれており、生田博士も 「老後はスペインで暮らそうか」などと言っていました。 |
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2.シンポジウムの内容
さて、本題のシンポジウムについてですが、参加者が大変多く(360人)、特にヨーロッパの若い人の参加が非常に多かったことが挙げられます。これはやはり地の利によるものでしょう。そのために全体での発表数は 317に対してポスター発表がこの種のシンポジウムとしては異常と思えるほど 多く(235題)、全部見て歩くのはかなりの苦痛 を伴いました。ポスターは大 部分が大判プリンターで直接印刷されており、デザインも大変凝ったものが多かったのですが、背景デザインに凝りすぎて文字が大 変見づらいものや縦長 のスペースに無理やり横長のポスターを押し込んだ代物も多く(写真12)、見映え最優先の風潮にはいささか疑問も感じました。日本人の参加者はそれほど多くなく、水研センターの研究者としては、私と生田博士の他は同じく内水 面利用部の矢田博士、北水研の安藤博士、養殖研の玄、伊藤の両博士とそこそこの参加者がいましたが、大学関係の人達がやや少ないようで、来年ボストンで開かれる「国際比較内分泌学会」にターゲットをしぼっているのではないか等と話していました。 シンポジウムの内容ですが、一口に魚類内分泌学と言っても、内分泌学自信身の範囲が非常に広くなっているということもあって大変幅の広いもので、全体を簡単に紹介するのは難しいのですが、パートとしては、内分泌系の発生学と遺伝学、神経内分泌学、生殖内分泌学、成長と代謝、ストレス及び免疫と内分泌系、ホメオスタシス、人間活動と環境因子が内分泌系に及ぼす影響、魚類内分泌学の増養殖への応用、魚類内分泌学における新規手法の9つの分野 に分かれていました。中でも発表の多かったのは生殖内分泌であり、次いで 成長と代謝でした。私の発表も生殖内分泌の分野で、様々な魚類における濾胞 刺激ホルモン分泌細胞 (FSH細胞)及び黄体形成ホルモン分泌細胞(LH細胞)の同定と、マミチョグにおけるFSH及びLHの精製とを紹介しました。(写真 13)色々な魚の写真入りのポスターはなかなか(楽しいと)好評で、配布用 のミニポスターも60枚用意したのですが全部売り切れてしまいました。また、ユトレヒト大学でアフリカナマズのFSHとLHを研究しているSchulz先生も 興味を持ってくださり、後日、私の手持ちの抗血清を提供して共同研究を行う 話もまとまりました。 シンポジウム全体としてはかなりのハードスケジュールで、連日朝8時半から夜の7時前後までOralまたはポスター発表が続き、途中のエクスカーションも半日のみ(バレンシアの水族館、写真14)と言うものでしたが、2日目の夜にはCultural eveningと称してコンサート観賞があったのもいかにもヨーロッパらしいものでした。 ベストポスター賞に輝いたのは北大出身の後藤-風藤理恵さん達のグループ(彼女自身は欠席でしたが)でした。おしくも賞は逃しましたが、当水研の生田博士のプレゼンテーション「The Effects of Estrogenic Endocrine Disruptors on Male Reproductive Behavior in Masu Salmon Oncorhynchus masou」(雌性ホルモン 類似内分泌攪乱物質がヤマメ雄魚の生殖行動に及ぼす影響)がベストポスター候補にノミネートされたことも紹介します。 帰りも同じくバレンシアまで電車で出て、パリ経由で成田まで戻ってきましたが、バレンシア発の飛行機の時間が早く、大変早起きをしたうえ、パリでの 乗り 継ぎが時間的に非常に厳しくてかなり疲れました。しかし、食事も予想 通りなかなかおいしかったし、スペインの良さを感じさせ、内容ともども充実 したシンポジウムだったと思います。次回はやはり4年後、カナダのカルガリで開かれるそうです。 |
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