3. | 研究結果の概要
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(1) | 繁殖抑制方法の基本方針
コクチバスを減少させるためには,その成魚の個体数を減少させるか,繁殖を失敗させ,次世代の卵や幼魚を死滅させるか,のいずれかが必要です。コクチバスは湖沼において秋冬期や夏期の高温期には,深場に移動したり分散しているので,効果的に捕獲することは難しいと考えられました。一方,5~7月の産卵期(水温16~20℃)には,水深1m前後の浅場に集まり,しかも産卵場所は集中してつくられるので,捕獲しやすくなります。この時期に,コクチバスの数を減らすとともに,卵の死滅によって次世代のコクチバスが生じないようにすることが必要です。従って,捕獲努力はこの時期に湖沼全体で一斉に行うことが望ましいと考えられます。
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(2) | 繁殖抑制方法の開発
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① | 新型小型三枚網の開発
コクチバスでは,雄が径40~100cmの円形の産卵床をつくり,そこを訪れた雌が卵を産みつけます。卵はふ化するまで雄親に守られます。当部漁場管理研究室の実験によると,雄を除去すると卵や仔魚は100%他の魚に捕食されて死滅したので,雄親を効果的に捕獲除去すれば,次世代のコクチバスが生じなくなると考えられました。
長野県水産試験場は,雄親が産卵床に留まり続ける習性を利用し,新型の雄親捕獲用の小型三枚網(写真参照)を考案しました。長さ1m程度のもので,ボートで移動しつつ産卵床の上に置いておくだけで効果があります。長野県の青木湖,木崎湖などでの実地試験では,2時間の設置で60%の雄親を捕獲できることが判明しました。極端に透明度の悪い湖沼を除けば,ほとんどの場所で繁殖を抑制することが可能です。また,この漁具はオオクチバスやブルーギルなどの他の有害外来魚の捕獲にも応用できます。
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② | 他魚種による捕食の利用
湖沼に生息するウグイ,コイ,ウナギなどの魚は,コクチバスの産卵床へ侵入して,コクチバスの卵を捕食します。当研究室の調査によると,2002年の青木湖では,雄親を除去しなくてもコクチバスの卵の80%はウグイによって捕食されていました。一方,他魚はコクチバスによって捕食されますが,コクチバスの体長の半分を超える長さの魚は,捕食されませんでした。従って,コクチバスの繁殖期にコクチバスの産卵床が集中する地域に,その湖沼にもともといる体長20cm以上の魚を放流すれば,コクチバスの卵を効果的に減少させることができると考えられます。この方法は,水の透明度が悪く産卵床の位置が不明な場合に効果的です。放流する魚は,その湖沼に固有の遺伝的特性を持つものが望ましいと考えられます。
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③ | このほかの方法
産卵場一帯にはコクチバスが集まるので,刺し網,投網,地曳き網,釣りなどによって,親バスを捕獲することが効果的です。刺し網では,捕獲するバスの体長の四分の一の長さの目合いを用いると効果的であることが,水産工学研究所漁業生産工学部漁法研究室の調査で明らかになりました。昼間にしかけるとフナなどの混獲を避けることができます。また,ミミズを餌にして,産卵床周辺で釣りをすると,雌も雄もよく釣れます。
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4.考察及び今後の展望