(6)フィッシュミール        

 我が国におけるフィッシュミール(魚粉)の生産は1970年代後半から 1980年代後半まで170万トン台を維持していたが,その後減少に転じた. しかし,原料をまいわし等から水産加工残滓1-3)等へ転じることにより 穏やかな回復を示しており,1998年には74万トンの生産を挙げている4)
 まいわしの漁獲の増加と北洋のすけとうだら等白身魚の減少に伴い, フィッシュミール原料はまいわしが主となった.また,製造法も煮熟水を 還元する方法へと切り替えられた.このフィッシュミールをにわとり 飼料原料とすることにより筋胃びらんを生じたことから高品質なフィッシュ ミール製造技術が求められた.なお,びらんの原因物質は遊離のヒスチジンと リジンより生じたギゼロイシンであることが明らかとされた5).また,フィッシュ ミール中のニトロサミン発生の可能性に関しても研究が行われた6). これら有害成分の生成を防ぐ製造上の問題点も原料魚,鮮度,工程から検討され,改善の方向が 指摘された7-9).国外においてもフィッシュミールの品質評価が化学分析 10)及び,使用対象生物である魚類11, 12), アワビ13)を用いて行われている. フィッシュミールは主に蛋白質源として 評価されているが,セレニウム等の微量元素源としても有用であることが示されている14)
(中 添 純 一) 
文献1)(財)政策科学研究所 平成5年度神奈川県魚腸骨再資源化調査報告書 pp.1-120(1994)
2)(財)政策科学研究所 平成6年度神奈川県魚腸骨再資源化調査報告書(Ⅱ) pp.1-102(1995)
3)岩手県漁業協同組合 漁業系廃棄物再資源化システム開発促進事業,平成10年度漁業系廃棄物処理対策構想策定に関する補助事業 pp.1-65 (1999)
4)平成11年度漁業の動向に関する年次報告
5)Okazaki T. et.al. Gizzeroisine, a New Toxic Substance in Fish Meal, Causes Severe Gizzard Erosion in Chicks., Agric. Biol. Chem., 47(12), 2949-2952 (1983)
6)戸沢晴巳,川端俊治:市販魚粉より検出された揮発性ニトロサミン,日本水産学会誌,52(11),969-974(1986)
7)飯田遙ほか:原料鮮度および製造条件の異なる魚粉の品質について ーⅠ,まいわし魚粉の化学的品質評価,東海区水産研究所報告,113,21-28(1984)
8)中添純一,飯田遙:品質の良い魚粉を作るための原料及び製造条件,農林水産省農林水産技術会議事務局編,新しい技術,第22集,304-311(1985)
9)外山健三ほか:水産油糧学,恒星社厚生閣,東京(1988)
10)Zaldivar L.J.: Standard of Judgment for Prime Fishmeal ,Chile Pesq., 71, 43-47 (1992)
11)Seneriches, M.L.M., Chiu, Y.N.: Effect of Fishmeal on the Growth, Survaival and Feed Efficiency of Milkfish Fry, Aquaculture, 71(1-2), 61-69 (1988)
12)Tacon, A.G.J. Feed Ingredients for Carnivorous Fish Species Alternative to Fishmeal and Other Fishery Resources , FAO Fish. CIRC., No.881 (1994)
13)Britz, P.J.:Effect of Dietary Protein Level on Growth Performance of South African Abalone, Haliotis midae, Fed Fishmeal-based Semi-purified Diets , Aquaculture ,140(1-2), 55-61,(1996)
14)Bell,J.D., Cowey, C.B.: Digestability and Bioavailability of Dietary Selenium from Fishmeal, Selenite, Selenomethionine and Selenocystein in Atlantic Salmon(Salmo salar), Aquaculture, 81(1), 61-68 (1989)

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