(1)水産物加工の動向 |
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政府は平成12年3月に食料自給率の数値目標として45%を掲げたが, 水産物の自給率は白書にも示されているように,近年は60%を推移 している.しかし,加工原料で見ると,塩蔵・乾製品,ねり製品, 冷凍食品,油脂・飼肥料,冷凍水産物,缶詰のいずれの業種におい ても原料自給率は30%以下にある.そのトップは冷凍すり身として 輸入されるスケトウダラであり,原魚換算(×4)すると,150万トン 近くにも達する.この事に呼応するように冷凍すり身に関する研究は 少ないし,ホッケ類の資源増加が期待されても,高品質化やHACCP 対応を目指した開発研究も少ない. 漁業や水産加工業は天然資源への依存性が極めて高く,農業の比では ないにもかかわらず,低・未利用魚に対する漁法や原料特性に関する研究が 少ない.その代表的な資源として,数千万トンの資源量あがると云われる 南極のオキアミと日本周辺のハダカイワシを代表とするマイクロネクトン, ワックスが多いために食用禁止になっている大型魚のアブラソコムツなど 枚挙に暇がない. その傾向は海藻にも及び,かっては多くの研究があり,健康食品 ブームで急激に伸びたワカメだが,輸入の急増に伴って研究も衰退している. 昆布,海苔,ひじきも輸入量を増やしており,国内品との差別化を目指した 研究が期待される. 水産加工業には,他の先進諸国と同調するHACCP 方式に基づいた生産体制の構築や地球環境の保全という見地で,加工残滓を 出さない生産システムの確立等が求められており,研究成果も出始めたので, 高品質かを目指した製造工程の見直しや微生物の制御技術の確立などに関する 成果が期待される. (西 岡 不二男)
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