情報公開日:2019年11月27日(水)
中央水産研究所海洋・生態系研究センター モニタリンググループの児玉武稔研究員が2019年度日本海洋学会岡田賞を受賞し、2019年9月25日から29日にかけて開催された日本海洋学会2019年度秋季大会において、受賞記念講演を行いました。
【受賞対象研究の意義】 日本近海の暖流域における栄養塩濃度の時空間分布は生物生産や水産資源の多寡を決める重要な因子で、海洋環境調査でもルーチン的に観測されています。しかし、栄養塩濃度の分布や変動については意外なほど総合的な理解は得られていません。本研究では栄養塩の高感度分析や最新の技術を駆使して得られた膨大な測定結果と過去データの総合的な解析に取組み、栄養塩の時空間変動のメカニズムを定量的に把握するなど多くの成果をあげてきました。さらに、栄養塩濃度の変動に大きな影響を及ぼす生物活動にも研究を展開し、機構の観測データや過去データを新たな時系列データベースとして構築・解析し、日本海の動物プランクトン現存量や群集組成変動、植物プランクトン春季ブルームの発生時期とマイワシ資源変動の関係など、低次生産環境の時空間分布の変動の記述や、変動要因の解析を行ってきました。以上のように、海洋を物理、化学、生物に渡る幅広い視点からデータに基づいて総合的に捉える事で新しい現象を見い出し、より信頼性の高い結論を構築してきたこと、その研究手法は今後の水産海洋学や生物地球化学的な海洋学の発展に大きく資するものと評価され、今回の受賞となりました。