中央水研ニュースNo.30(2002...平成14年11月発行)掲載

【情報の発信と交流】
一般公開報告


目次
上田庁舎(内水面利用部)
高知庁舎(黒潮研究部、こたか丸)
横須賀庁舎(海区水産業研究部)

上田庁舎(内水面利用部)
長野県上田市にある内水面利用部では,平成14年8月30日(金)に一般公開を開催しました。内水面利用部では平成8年度以来一般公開を開催しており,今回は独立行政法人となって2回目の一般公開になります。
昨年度までは日曜日や祝日に開催し,研究成果の講演や展示,ミニ水族館,金魚すくい,ニジマス釣りなどを行ってきましたが,本年度は趣向を変え,来場者に実際に魚などに触れてもらう体験学習を行いました。「魚の生態」と「水生昆虫と藻類の生態」の2つのコースを用意し,午前中は地元の中学生,午後は一般の方をそれぞれ対象としました。
「魚の生態」では,研究所の横を流れる千曲川を中心にどんな魚がどのような生活をしているかについて説明し,ブラックバスなどの外来魚(オオクチバス,コクチバス,ブルーギル)が千曲川や日本に生息する在来魚にどのような悪影響を及ぼすかについて考えてもらいました。そのあと,各自に1匹ずつオオクチバスやコクチバスを配り,用意したハサミやピンセットで魚を解剖してもらいました。アユやウグイも一緒に解剖し,魚に一般的な体の構造とブラックバスに特有な体の構造を比較しました。
クライマックスはブラックバスの胃の中の調査です。多くのブラックバスの胃の中はからでしたが,なかにはワカサギなどの魚や大きなカエルを食べていた魚もおり,ブラックバスが日本の魚や生き物を食べていることを知ってもらいました。一方,ゴム製のワームと呼ばれる釣り用の擬似餌が胃に刺さったまま出てきて,釣りがブラックバスを痛めつけていることも知ってもらいました。
「水生昆虫と藻類の生態」では,研究所の敷地内を流れる水路で実際に水生昆虫や藻類を採集し,実験室に持ち帰って種類や生態を調べました。水生昆虫の多くは扁平だったり,丸くて芋虫のようなので,はじめはみなさん気持ち悪がっていましたが,水槽でしばらく見ていると動きに愛嬌があるのがわかり,おもしろそうにながめていました。また,水を張った水槽に魚を入れ,水生昆虫を入れると,食べられてしまうものもいれば,食べられないように魚を威嚇したり,巣を作って防御するものもいて,同じ水生昆虫でも魚に対する反応が違うのにはみなさんびっくりしていました。藻類については顕微鏡を使ってテレビ画面に大きく映して見せましたが,いろいろな形にみなさんミクロの世界のようだと見入っていました。また,検査パックを使った簡単な水質分析も体験してもらいました。
当日の来場者は中学生が38名,一般の方が24名,合計62名と昨年度並みでした。上田市という地方の小都市で,平日の開催にしては多くの方に来ていただけたと考えています。アンケートの結果を見ると,「解剖が怖かった」という中学生の意見や,「小さい子供には話が少しむずかしかった」というお孫さんを連れた年輩の方の意見もありましたが,「解剖は楽しくてまたやりたとい思います。最初はイヤだったけど・・・」といった意見や,「小学生の時の解剖では1班で1匹だったけど,今日はひとりで1匹解剖できて良かった」という意見もあり,解剖したり実験したりと実際に自分たちで体験するという今までと違う趣向に,中学生も一般の方々も中身が濃い一般公開と大変喜んでもらえたようです。体験学習というはじめての試みにしては良かったのではないかと職員一同考えています。
 日頃私たちが取り組んでいる研究を広く一般の方々に知っていただくために,一般公開は重要であると私たちは考えています。本年度は体験学習を中心とした一般公開でしたが,来年度はどのようなスタイルにするか今から職員の間で話題になっています。
写真1.ブラックバス(コクチバス)の解剖
写真2.水生昆虫や藻類の採集

高知庁舎(黒潮研究部・こたか丸)
 中央水産研究所高知庁舎では「黒潮の海と生き物」をテーマにして,平成14年7月20日(海の日)に一般公開を行いました。例年通り,高知港を中心に行われた「高知みなとまつり」の関係行事としての役割も担っています。前日までは梅雨前線や台風の影響の雨模様で天候が心配されたのですが,当日は梅雨明け宣言と共に高知の強い日差しが戻ってきて,例年通りの「暑い」一般公開となりました。
 庁舎では各研究室ごとにパネル,標本などの展示コーナーを設けて研究紹介を行い,また観測測器の展示も行いました。毎年人気のタッチプールや,今年は新しく「ウナギ釣り」コーナーも設けました。「ウナギ釣り」は絶大な人気で(写真3),持ち帰るためのアイスボックス持参で来所された方もおり,時間を決めて人数制限をしたにもかかわらず昼過ぎには用意したウナギが全て釣られてしまう盛況ぶりでした。展示コーナーでは顕微鏡に人気が集まりました。プランクトンを見た子供からは「変な格好」とか「海の中にこんな生物がいるんだ」,耳石には「魚に年齢があるなんて知らなかった」等の声が聞かれ,普段とは違った視点で海の生き物を感じてもらえる機会を提供できたと思います。また,パネルの説明にも力が入り「黒潮の説明が良かった」のアンケートの声もありました。
 こたか丸の公開も併せて行いました。こたか丸は海の日の写生大会のモデルとして一番人気ですが,公開でも庁舎以上に来訪者が多く,航海機器や観測測器の説明に興味深げに聞き入っていました。今年はこたか丸の甲板でロープワークの講習会を行いました(写真4)。こちらも参加者が多く,大人・子供ともにリピーター(午前も午後も参加した人)も見られ,夏休みの作品やバザー用に編み方を覚えたいという方が,炎天下にもかかわらず熱心に手を動かしていました。甲板長がカッコ良かったという声も聞かれましたので,人気の秘密はロープワーク以外にあったかもしれません。来訪者は庁舎に166人,こたか丸に169人と昨年に比べて50%以上も増加しました。昨年来訪者が少なかった反省から,今年は近隣に新聞折り込みチラシとして1万枚を配布しましたが,アンケートの結果を見るとチラシを見て来た人が6割にものぼり,マスコミの威力を改めて思い知らされました。一方で毎年の一般公開を楽しみにしているリピーターの方も多く,パネルや展示などに新たな工夫が必要なことも事実です。ただ単に「楽しい」という声でなく「○○がおもしろかった,興味を持てた」,あるいは「こんな事知らなかった」という具体的な声が聞こえるような一般公開にできればいいと考えております。
 最後に,アンケートには「7月20日以外にも見学したい」「文献等,いつでも閲覧できればいいと思います」の声もあり,開かれた研究所としての対応も今後の課題といえます。
写真3.僕も私もお父さんも ~大盛況のウナギ釣り
写真4.私にも編めるかな? ~ロープワーク講習会

横須賀庁舎(海区水産業研究部)
 毎年7月20日(海の日)に行う海区水産業研究部の一般公開も今年で3年目を迎え,恒例行事となってきました。今回は「海の中の危険な生き物」と題して,カギノテクラゲ,ゴンズイ,ハオコゼ,ガンガゼなど人体に害を及ぼす危険のある魚介類を水槽展示し,ポスターで症例や対処法等を紹介しました。また,タッチプール,観測機器の展示,インターネット体験,ビデオ上映,ポスターによる研究紹介,投網体験,前浜のアマモ場でのソリネット採集体験などを行いました。
 今年の来訪者数は247名で,家族連れの中では小学生のお子さん連れが多くみられました。通りがかりに立ち寄ったという方が約半数を占め,県外からの来訪者は全体の約20%でした。大がかりな宣伝が行われた昨年の約1/3と,来訪者数は少なかったものの,アンケートによると多くの方々に楽しんでいただけたようです。特に投網,タッチプール,ロープワークなどの体験コーナーに人気がありました。投網体験は芝生の上で魚のぬいぐるみを標的にして行いましたが,なかなかうまく開かない重い網と格闘することで,漁業の大変さを実感したと感じた小学生もいたようです。子供の前でいい格好見せるか!と張り切っていたお父さんも,「あれれ?」そう簡単には行かなかったようです。ソリネットでの採集ではハオコゼがたくさん採れましたが,「これ食べられるの?」としきりに聞く子供や,危険だからさわらないようにと言っても,手を出したくてウズウズしている子供,ちょっと離れて恥ずかしそうに,でも興味深げに見ている子供など,それぞれに楽しんでもらえたようです。
 横須賀庁舎のメンバー構成は小規模ですので,横浜の企画連絡室の方々や,研究で滞在していた東京大学や東京水産大学の学生の方々に応援していただきました。和気あいあいとした雰囲気のなかで来訪者の方々に楽しんでいただくことで,多少なりとも漁業や海洋生物,海洋環境に造詣を深めてもらえたのではないかと思います。今後も広報活動の一つとして一般公開に力を入れていきたいと考えています。
魚介類の水槽展示
採集体験
インターネット体験
投網体験

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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