中央水研ニュースNo.20(平成10年4月発行)掲載

【研修と指導】
研修報告
吉田 勝俊

 平成9年9月1日~11月30日の3ケ月間、新 日本気象海洋株式会社環境創造研究所の河本秀夫氏 が「魚類DNA中の反復塩基配列の検索と利用に関 する研究」研修のため来所しました。核DNA中に は多数の反復塩基配列が存在することが知られてい ます。その中でも縦形反復塩基配列はその反復回数 が多型性を示すことが知られており種判別、育種、 耐病性等のDNAマーカーとしての利用が進められ ています。研修では最近報告の増えている核DNA 中のGT反復配列多型の検索と測定を行いました。 GT反復配列に代表される核DNAの縦形反復配列 多型は、PCRを利用することにより少量の試料か らの分析が可能になり、多数の対立遺伝子を持つ座 が多く存在すること等の点でアイソザイム分析より 有利であり、メンデル遺伝する点がミトコンドリア DNA多型とは異なります。クロソイを試料として 核DNAの調製、制限酵素による切断、ベクターへ の組込みと大腸菌の形質転換、スクリーニング、陽 性クローンの塩基配列決定、PCRプライマーの設 計、蛍光色素標識PCR増幅断片の鎖長測定による 多型の判定、と一連の作業手順を共に行い実際に経 験してもらいました。スクリーニングには主に放射 性同位元素を利用しましたが、新たに研究を開始す る際に放射性同位元素の使用施設を設置することは 大きな負担となることを考え、アビチンビオチンを 用いた非放射性の検出法も検討しました。DNAの メンブランヘの固定法、ハイブリダイゼーション及 び洗浄の条件を調整することにより放射性同位元素 を利用した場合とほぼ同等な結果を得ることが出来 ました。PCR増幅断片の鎖長測定に蛍光標識を用 いることと合わせて、全ての実験を放射性同位元素 を使用せずに行うことが可能となりました。水産分 野では対象となる生物種が多くその種に適応可能な 多型判別プライマーセットを開発・蓄積する点で、 今回の研修が少しでも役立てばと思います。
(生物機能部分子生物研究室)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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