中央水研ニュースNo.20(平成10年4月発行)掲載

【研修と指導】
計量魚探の実務研修会
渡辺 洋

 計量魚群探知機(計量魚探)は、魚群探知機やソ ナーのように魚群の反射エコーを拾い上げて表示す るだけではなく、エコーに対して様々な処埋を行 い、魚群量や個体のサイズ等定量的な情報を引き出 し、魚群量や個体のサイズ等を測定する音響機器装 置である。特徴としては、TVG回路(音波の減衰 を補正する)、エコー処理(解析)部及びデータ用・ 較正用出力機能を備えていることである。問題はこ の装置を効果的に使うためには、ある程度の専門知 識の習得が必要であると言えることであろう。昨年 度の中央ブロック水産業関係試験研究推進会議およ び遠洋漁業関係試験研究推進会議において、いくつ かの水産試験場からこの計量魚探の使用の技術習得 のための研修会を開いてほしいという要望が出され た。それに基づいて当研究所とこの機器の開発研究 を行っている水産工学研究所が協議し、共催という ことで研修会を持つこととなった。
 「計量魚探の実務研修会」と名付けられたこの研 修会は、一般研修として12月1日に当所講堂にお いて、水研7名、水試30名の参加者のもと開催さ れた。講師としては東水大の吉澤昌彦海洋生産学科 助教授、水工研の宮野鼻洋一音響機器研究室長、中 央水研の原一郎資源管理研究官、水工研の澤田浩一 海洋測器研究室員が対応し、音響機器の基礎に始ま り、水産音響調査の現状と問題点、水産音響資源調 査の実際とこの機器のハード及びソフトに関する講 義が行われた。そして2日目午前中には調査船「蒼 鷹丸」において、計量魚探システムの紹介を目的と して見学会が行われた。この後実技研修として、2 日午後から6日午前までの4泊5日の日程で、調査 船「蒼鷹丸」に一般研修受講者の中から選抜された 6名(水研3名、水試3名)が乗船して、実際に計 量魚探を使用しての研修が行われた。なお、講師と して前述の宮野鼻室長、澤田研究員に水工研の奥村 都誉司電子機器研究室員の3名が対応した。内容と してはまず伊東湾において較正実習を行った後、駿 河湾にて計量魚探の使用方法から実際に操作してみ ての実習、対象を確認するためのネットサンプリン グ、さらに航走減衰及び雑音の測定等の推定精度向 上のための注意点、データ解析の概要などの実技研 修を行った。
 さらに、1月17日から19日の2泊3日で「蒼 鷹丸」を使用して、再度研修を実施した。これは、 12月の研修で乗船希望者が多かったにも関わら ず、船の定員の関係で6名しか乗船ができなかった ことに対する、追加の意味合いで行ったものであ る。この研修には水試5名の参加者がおり、講師陣 は前回と同じメンバーであった。この航海は冬場の 気候の不安定さという面があったが、館山湾から相 模湾において無事予定通りの研修が実施された。本 研修会の実施者の感想としては、一般研修の講義に ついては講師陣が十分なキャリアを持った者であっ たため、その講義内容が判ってもらえたものと考え ているが、講師間の相互連絡が不十分であり、内容 の過不足があった恐れもあるという反省材料もあっ た。一方、実技研修においては若干の問題点があっ た。当初蒼鷹丸の12月の航海は水工研の調査研究 を目的としたものであったが、研修会の実施が加 わったため、どちらの仕事も半分くらいしかできな かったということである。つまり、較正、グリッド 調査、魚種確認、航走減衰、雑音測定、解析プログ ラムなどの音響調査に必要な作業についての解説が 必ずしも十分とは言えず、また、実際の調査の合間 に研修を実施しなければならなかったため、そう いった面では十分ではなかったという感が否めな かった点である。研修者にとっては不十分な解説と 短い実技に終わった恐れがあり、その点は主催者と してお詫びしたい。しかし、少人数のため自由な質 疑が可能であり、有意義であったとも考えられる し、また、短期間であったが、音響資源調査に関心 を持つ研究者間の相互理解が図られ、今後、この研 究分野の情報交換や研究交流の活性化に有益であっ たのではないかと考えている。なお、1月の研修で はこの点に留意し、研修者自身による操作の時間を 増すことを心がけた。10年度は研修会のために1 航海準備しており、十分な研修ができるものと期待 している。
(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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