中央水研ニュースNo.20(平成10年4月発行)掲載

【研究調整】
平成9年度水産業関係試験研究推進会議報告
松里 寿彦

 平成9年10月28~30日の3日間、中央水研にお いて標記の会議が開催されました。本会議は平成元 年の水産庁長官通達に基づく水産庁研究所内部会議 としては最大規模の会議で、主催者及び水産庁研究 所等構成者48名(うち代理出席1名)、水産庁行攻 部局から12名、農林水産技術会議事務局より1名、 水産大学校、さけ・ます資源管理センターより各1 名のオブザーバーを加え出席者総数63名となりま した。
 会議は全体会議と資源管理、海洋環境、資源増殖 の3部会から成り、全体会議での報告、協議事項に ついて部会でさらに詳細な検討を行うことになって います。また、各部会では各分野特有の協議事項も 討議されました。
 第1日目の全体会議では水産養殖、水産工学、水 産利用加工の各専門分野別研究推進会議及び地域研 究推進会議の一つである内水面研究推進会議、さら に農水省国際農林水産業研究センター水産部の活動 に関わる国際農業試験研究会議の報告が行われまし た。注目すべき点としては、水産利用加工分野では 当初より行われていましたが、水産養殖分野でも推 進会議に関係業界代表者を招き積極的な意見交換を 行ったとの報告がありました。
 協議事項として本年は、1.緊急事態に対する水産 庁研究所の対応と間題点、2.平成11年度向けプ ロジェクト研究課題化素材について、3.研究成果 情報についての3項目ですが、特に緊急事態に対す る水産庁研究所の対応と問題点に関しては、「ホタ テ貝毒問題(東北水研)」、「アコヤガイ異常へい死 問題(南西水研、養殖研)」、「ナホトカ号重油流出 事故問題(日水研、中央水研)」、「国際問題(西水 研)」、「行政からみた緊急事態の認識・対応と問題 点(水産庁研究指導課)」等各研究所、行政それぞ れから具体的事例について報告と問題点の指摘がな されました。
 各部会ではこれら共通協議事項の外各分野別の協 議事項として、例えば、資源管理部会ではCITES等 国際会議への対応、資源管理基準に関する世界の状 況のレビュー等、海洋環境部会では衛星を用いた海 洋観測研究の推進、海洋環境データの管理手法等が 話し合われました。また、資源増殖部会では養殖漁 場の環境収容力問題や生態研究の基礎となる「底生 幼稚魚の採集調査手法の標準化」が話し合われ、そ れぞれレビューもしくは成果報告書として取りまと めることとなりました。
 本推進会議の共通協議事項に関する協議の結果は 以下の通りです。

1.緊急事態に対する水産庁研究所の対応について
 油流出事故、アコヤガイの大量へい死事例等昨今 予想しない突発的事故に遭遇しその対応を検討した 結果次のような結論に達した。
1.異常事態に対する組織的対応
異常事態は①原因が特定される油流出事故等の「事 故」と②原因の特定が困難なアコヤガイ大量へい死 等の「不測の事態」に分けられる。
①「事故」に対してはこれまでの経験の蓄積から速 やかな初動体制、調査、研究体制確立のための指針 を関係行政部局と協議し作成する。
②「不測の事態」については情報の収集・解析及び 異常性、緊急性の判定のためのシステムが必要との 認識で一致した。
2.研究基盤の整備
1)基礎的データベースの構築
緊急事態に速やかに対応するために沿岸と沖合を含 めた海洋環境・生物のデータベースの構築が必要で ある。さらに海洋研究分野においては他省庁と連携 した化学物質等のデータベースの構築、資源増殖分 野では増養殖対象種に関連した詳細なデータベース の構築が不可欠との認識で一致した。
2)調査・分析手法の統一
生物毒の分析手法、化学物質の分析手法、生態系調 査手法等について既往の調査・分析手法を比較検討 し、統一を図る。
3.関連基盤研究の強化
緊急事態に適切に対応するためには広範な基盤的な 研究の強化が必要である。例えは、1)沿岸域の環 境・生態系研究、2)重要産業種対応研究者の育成、 3)モニタリング手法の高度化、等。

2.平成11年度向けプロジェクト研究課題化素材 について
 提出された水産庁研究所提出研究課題化素材32 課題、行政部局提案研究課題化素材7課題、合計39 課題を検討した結果、平成11年度向け技会特研課 題として「イカ類の再生産過程における主要構成要 素の定量化手法の開発」を提出する事とした。な お、「植物プランクトンによる二枚貝類の機能障害 と大量へい死に関する研究」については、さらにブ ラッシュアップすることとした。平成11年度開始 予定のポストバイコス大型別枠研究については積極 的に参画していくことを再確認した。

3.研究成果情報の分類・評価
 提出された課題の大部分がブロック推進会議、専 門推進会議を経たものであり、提出された課題全て を評価・了承した。

(水産研究官 現養殖研究所企画連絡室長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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