上田庁舎一般公開
中央水研ニュースNo.15(平成9年(1997)3月発行)掲載

【情報の発信と交流】
上田庁舎一般公開
村上 眞裕美、阿部 信一郎

 中央水産研究所上田庁舎では平成8年7月20日(海の日)に一般公開を行いました。1942年 に水産試験場上田分場開場お披露目の公開をして以来54年ぶり2回目のことだそうです。日本の淡 水魚研究の一拠点として55年間この地にありながら、その存在が近隣の住民にさえあまり知られて いないと感じていましたので、この機会に研究所の存在と研究活動の内容を一人でも多くの人に知っ てもらい、同時に淡水魚や内水面環境の保全に関心を持ってもらうことを目指しました。
 公開の目玉はガラス水槽を並べての淡水魚の展示です。展示する約30種の魚は千曲川や上田庁舎 周辺の水路で捕獲したり、長野県水産試験場から頂いたりして調達しました。展示パネルによる研究 紹介、顕微鏡によるウロコ、付着藻類、水棲昆虫等の観察を行い、クイズコーナーやビデオ映写コー ナーも設けました。また屋外の池ではコイに餌をやったりタライに入れた体長60センチあまりのコ イに触れられるようにしました。
 事前の広報活動は、ポスター60枚を上田市内の学校、市町村役場、JR上田駅等に張り、案内状 約200枚を各方面に送りました。また放送局6局と新聞5社に取材と報道を依頼しました。その結 果、週刊上田新聞が1週間前に、NHKが前日夕方にイベント情報を流しましたし、信濃毎日新聞は 来訪取材のうえ、一般公開が行われるという記事を2日前に掲載しました。(特に信濃毎日新聞の記 事が効果的であったことが当日のアンケート調査から分かりました。)
 当日は天候に恵まれ、朝10時の開場と同時に赤ちゃんからお年寄りまでの来場者が途切れず、午 前中だけで150名、16時の終了までに258名が来場し、大方の予想を大きく上回る盛況ぶりで した。構内の空き地を整備して用意した約50台分の駐車スペースも一時はほぼ満車状態でした。来 場者の構成では、小学生以下の子供がいる家族連れが70%以上を占めたことと、中学・高校生がわ ずか1名づつだったことが特徴的でした。また来場者の約40%、大人だけについても約20%の人 が、今回の公開までここが国の研究所であることを知らなかったとのことでした。行事内容では、も っとも好評だったのがガラス水槽による淡水魚の展示で、ついで顕微鏡観察でした。 子供たちにはコイに触るコーナーも人気があり、クイズコーナーでは上小漁協のご好意で景品(下敷き)を付けるこ とができ、大いに盛り上がっていました。来場者の評判もよく、「色々な淡水魚を見られて面白かっ た」、「地元に住んで28年、初めて中を見せてもらってよかった」、「少し魚の名前をおぼえた」 、「もっと顕微鏡を見せてほしい」、「またやって下さい」、「夏休み中ずっと公開して下さい」、 「今後も地元と密着した施設でいて下さい」などの感想や要望が寄せられました。実質的には初めて の一般公開で何のノウハウもなく戸惑う場面も多々ありましたが、炎天下の屋外作業(空き地の草刈 り、立ち入り禁止個所への杭打ちとロープ張り、水路の渡り板の架け替え等)も含めて、企画、準備 、当日の対応まで、部長以下全職員が分担、協力しての総力戦で取り組んだ甲斐がありました。
 その後上田市から「水産研究所のそばに淡水魚水族館を建てることを検討しているのでご協力を」 との要請があり、波及効果の大きさに驚くと同時に、「やっただけのことはあるものだな」と喜んで います。
(内水面利用部漁場環境研究室・漁場管理研究室)


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