【研修と指導】

メガフロートの生態系への影響評価

杉山元彦

 平成5年12月に出された運輸技術審議会の「新時代を担う船舶技術開発のあり方について」の答申も踏まえて、政府の諸施策のひとつとして、超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)の研究開発の推進が図られることになった。

 このメガフロートとは、数多くの大きな鉄の箱を海上に浮かべて互いに接合し、その上に空港や物流拠点、廃棄物処理施設等の建設を想定しているものである。

メガフロートの開発のため、造船・鉄鋼両業界が共同でメガフロート技術研究組合を結成し、平成7年度から神奈川県横須賀市夏島地先で100mx20mx2mの鉄の箱4基を海上で溶接接合(平成8年7月に、さらに5基を増結)し、実証実験を開始している。

 技術研究組合では、開発研究に当たって浮体設計等の工学に関する5分科会のほか、生態系影響評価手法の開発等を目的とした環境評価分科会も設置しており、この分科会に水産庁研究課を通じた依頼により、筆者も他省庁傘下の研究機関の専門家9名とともにアドバイザーとして加わっている。

 筆者は現在のところ、巨大浮体の生態系への直接的な影響として、
 ①海水流動阻害
 ②大気から海水中への酸素の拡散溶入遮断
 ③太陽光の遮断による光合成の阻害
 ④浮体底面への付着生物の蝟集
等があると考えている。このうち①~③は浮体設置水域の海水中への酸素供給速度の低下をもたらす要因である。また、④は付着生物の呼吸の他、浮体から剥離・脱落した生物の分解など、溶存酸素の消費速度増加につながる。

 この様な観点から筆者は、平成8年5月22日に開催された環境影響評価技術部会の平成7年度研究成果報告会に参加し、メガフロートの生態系への影響を酸素収支の面からも捉える必要のあることなどについて助言を行った。また、今後は生態系への影響を軽減するための論議にも参加して行きたいと考えている。

(環境保全部長)