ずわいがに水煮缶詰

○ずわいがに水煮缶詰とは
 加熱、身出ししたズワイガニの肉に薄い食塩水等を加えて調味し、 真空密封、高温高圧殺菌した缶詰のことで、大きく分けると脚肉の 棒肉(第1脚肉)のみを使用したもの、肩肉や崩れ肉を使用したフレーク、 棒肉とフレークを混合したものの3種類があります。 ズワイガニ
ズワイガニ脚部の棒肉のみを使用した
缶詰製品
(写真提供:(有)トリサン)
○生産と消費の動向
 ずわいがに水煮缶詰だけの統計資料は無く、かに缶詰全体の生産量で見ると1998年以降減少傾向にあり、 2003年の生産量は約3,500tとなっています。 
2
かに缶詰の生産量の推移
(社)日本缶詰協会
缶びん詰レトルト食品国内生産量統計より
○原料選択のポイント
 ズワイガニは、アラスカ沿岸、ベーリング海から樺太、朝鮮海域にまで分布し、 日本では日本海側沿岸と仙台湾以北の太平洋岸に生息しています。 缶詰加工用には雄のズワイガニが使用されます。
 一般的な製造方法では、生鮮ズワイガニが使用されますが、ロシア、アラスカ、 カナダ産の加熱済み身出し冷凍ズワイガニが用いられる場合もあります。
 加熱冷凍原料を使用する場合も、生鮮原料と同様に、原料の品質が 製品の品質に大きく影響することから、風味や色調が良く、肉質が良好なものを使用します。
○加工の原理
 加熱後身出ししたズワイガニ脚肉または、肩肉を硫酸紙を敷いた缶にきれいに並べ、 食塩水をベースにした調味液を充填して、真空巻締し、高温高圧殺菌を行います。
○実際の製造
 今回は冷凍原料を使用した場合の製造工程について説明します。
●製造工程図
原料 生鮮ズワイガニ
脱甲 甲羅、エラを取り除き、脚部と肩部
(セクション)にする
洗浄 洗浄機により洗浄する
裁割 部位によって煮熟時間が異なるため、
脚部と肩部を切断する。
煮熟(一次煮熟) 60℃前後で5分間程度煮熟する。
水洗・冷却 未凝固の血液を清水にて水洗・冷却する。
採肉 脚部はローラーで採肉する。
煮熟(二次煮熟) 95℃で5分間程度煮熟する。
冷却
冷凍 急速冷凍(グレーズまたは真空包装)する。
原料の解凍 鳥取県企業の場合はここから開始している。
配合、秤量、肉詰 
 肉詰めに際しては硫酸紙でカニ肉を包む。
真空巻締
殺菌 高温高圧殺菌(F値4以上)する。
冷却
函詰
 ロシア、アラスカ、カナダ産の加熱済み身出し冷凍ズワイガニを用いる場合、 まず解凍するところから作業は始まります。以前は二段煮熟した原料が使用されていましたが、 最近は一段煮熟(高温煮熟)のものが多くなり、時折ブルーミートと呼ばれる不良品の発生も見られます。
 二段煮熟とは、かに肉タンパク質の凝固温度(55~60℃)と血液成分であるヘモシアニンの それ(70℃)の差異を利用したもので、60℃付近の温度で煮熟(一次加熱)後、水洗いしてブルーミートの 原因となるヘモシアニンを洗い出し、次いで95℃程度で煮熟する(二次加熱)ことです。
 調味は、食塩をベースにその他の調味料を配合します。肉が缶に直接接触しないように、 専用装置により缶に硫酸紙を装着して肉を包みます。スチール缶を使用する場合、 缶内面をエナメルコーティングされたものを使用することにより、黒変は大幅に減少しますが、 より安全を期すため硫酸紙を使用します。アルミ缶を使用する場合は黒変が生じないため、 硫酸紙は使用せず、直接肉詰めします。
ズワイガニ
硫酸紙装着装置

ズワイガニ
肉詰め工程
 肉詰め量は、加熱殺菌後の身の歩留まりを勘案して1割程度多めに充填します。 製品は大別するとズワイガニ脚部の棒肉のみを使用した製品と、フレーク製品があり、 フレークには肩肉、棒崩れ肉、爪肉、ナンバン肉(第2脚肉)、ラッキョウ肉(関節肉)等が 使用されます。棒肉とフレークを混合した製品もあります。
 殺菌の方法は、高温で短時間(120℃30分程度)加熱する場合と、比較的低温で 長時間(110℃90分程度)加熱する2種類の方法があります。缶の中心温度は、温度ロガーを用いて記録します。
ズワイガニ
温度ロガー
○製品の形態・包装等
 缶は内側にエナメルコーティングを施したスチール缶(T2号、C3号)、 またはアルミ製のプルトップ缶が使用されます。

小谷幸敏(鳥取県商工労働部産業技術センター)