たらこ

○たらことは
Highslide JS  現在、一般にたらことして流通しているものは、スケトウダラの卵巣を塩蔵したものです。そのまま食べたり焼いて食べたりしますが、最近では、コンビニエンスストアでのおにぎりの具材として定着し、ピザやパスタなどの洋風の料理にも使われ人気が高くなっています。たらこが生産されるようになったきっかけは、マダラが不漁の時にスケトウダラを代替で漁獲したことです。卵も大正時代から市場に出回るようになり、「紅葉子(もみじこ)」などの別名で出荷される場合もあります。辛し明太子のルーツは朝鮮半島で、スケトウダラを「明太」と呼び、その卵で作られたものを「明太子」と呼んだところが始まりとされます。
 たらこは成熟の進んだ順に、がむ子、真子、特目(とくめ)、目付け(めつけ)、水子(みずこ)とに分けられます。
○生産と消費の動向
 たらこの生産は1986年頃の約6万tをピークに減少していき、2000年には約2万tとなっています。全国の60%は、北海道で生産されています。
○原料選択のポイント
 現在は、たらこ原料のほとんどはアラスカやロシアで漁獲され、船上で採卵し急速凍結されたものを原料としており、アメリカ、ロシア、韓国から輸入されています。
 少し前までは、凍結機の性能等により原料品質にばらつきが見られましたが、近年は冷凍技術の発達により近海原料に近い状態で供給されています。
 また、漁獲海域の資源量や漁獲割当、漁獲動向により、品質及び価格等へ大きな影響が出ます。
○加工の原理
 塩蔵たらこは、食塩を主体とした調味液によって、原料卵からの脱水による身締めと同時に、調味と着色を行います。身締まりの度合いが品質を左右します。
 たらこの独特の色を出すために、食用色素などを用いることもあります。
○製造の実際
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原料
 北海道近海や北洋海域で漁獲・採取したもの、アメリカ、ロシアなどからの輸入した卵が使用されています。
卵巣採取
 スケトウダラから卵巣を取り出し、塩水で、粘液、血液、夾雑物を洗い流します。
 ※「原料」から「水切り」までは洋上で加工され、凍結原料として輸入されています。
解凍
 凍結原料は低温の解凍室および解凍機を利用して解凍されます。
調味漬け・着色
 食塩の量は漬込み液10L当たり600~1,200gの範囲とし、季節、卵質によって適宜使用量を決定します。なお、漬込みのときに食塩を使用する製法の場合も、食塩の使用量は同様となっています。食用色素および調味料を使用する場合は、正確に計量し、過量使用にならないようにするとともに、漬込み液はその都度調整します。
手返し
 漬込み液を浸透させるために手返しを、漬込み後1時間以内は4~5回、2~3時間の間は30分ごとに1回、3~6時間の間は1時間毎に1回程度行います。手返しの回数は、様子を見ながら増減します。なお、この工程については、近年、回転機の導入により自動的に行われるようになっています。
熟成
 手返しの終了した原料は、低温の熟成室で1~2日程度熟成されますが、熟成の期間は製品の仕様、および製造者によって変動があります。
水切り・整型
 低温下で十分に水切りされた製品は、形を整えるとともに、製品の良否により選別されます。
選別・包装
 卵質・形状ごとに選別、計量され、ただちに包装されます。計量については、自動計量機の普及により効率的に計量されます。容器包装には、食品衛生法施行規則第5条の 規定に基づく表示事項のほか、消費期限または品質保持期限および量目が表示されます。
○製造装置
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○製品の形態・包装等
 個人消費向けとしては、発泡スチロール製のトレイに入れ、ラップ包装されます。業務用として、発泡スチロール箱、贈答用として、プラスチック製の樽詰など、包装される形態がいろいろあります。
○品質管理のポイント
 漬込み後のたらこは塩分によって凝固しやすくなるので、洗浄後速やかに整形する必要があります。また、整形のときも夾雑物をよく取り除きます。
○安全・衛生管理
 たらこは、非加熱製品ですので、加工工程での菌の増殖を可能な限り抑える必要があり、温度管理や作業者の着衣、手袋、マスク等の着用により菌の増殖や汚染に留意しなければなりません。

三浦 悟(宮城県水産技術総合センター)