こんぶ佃煮

○こんぶ佃煮とは
 コンブを醤油と砂糖をベースとした調味料を用いて煮詰めて作ります。 水産物を原料とした佃煮類の生産額は、平成15年度10万8千トンでしたが、 こんぶ佃煮はその40%の約4万4千トンが生産されています (農林水産統計、平成15年水産加工品生産量)。
 こんぶ佃煮は、コンブが自然食品、健康食品として見直されていること、 また、消費者の減塩志向等に合わせた製品づくりにより、 今後も安定した需要があるものと思われます。
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昆布の佃煮
○原料選択のポイント
 原料コンブは北海道日高地方が主産地のミツイシコンブや釧路、 根室のナガコンブが主に用いられていますが、高級品は「マコンブ」、 「リシリコンブ」も使用されます。こんぶ佃煮も他の佃煮同様、 原材料の選択が重要で、肉厚で、幅が揃った、鮮度の良好なコンブが良いです。 近年は原料不足から中国産、韓国産コンブも使用されていますが、 佃煮の仕上がり、風味、光沢等を考慮すると内地産の良質な原料が最適で、 低品質の原料を使用すると風味も低下します。また、副材料として使用する調味料は、 色、味、食感等各製品の仕上がりを考慮して、良質なものを使用します。
○加工の原理
 こんぶ佃煮は、醤油、アミノ酸液、砂糖、食塩、 水飴等からなる調味液で原料のコンブを煮熟して製造します。 コンブは、調味液で煮込む(100~120℃)ことにより、軟らかく膨潤します。 コンブに調味液が十分染み込みながら、水分と調味料の交換がなされ、 味付けと同時に脱水が行われます。高温で煮詰められている間に原料に付着している細菌、 カビなどの微生物はほとんど死滅します。 また、煮上がった製品は急速冷却すると水分が発散して、 表面に濃厚で粘性のある調味液の被膜をつくり、製品に光沢がでます。 調味液に使用される醤油、アミノ酸液、砂糖、水飴や食塩は佃煮の風味付けに、 水飴や寒天は表面に光沢やなめらかさを付与するために使用されます。 また、色調改善に天然着色料のカラメルが使用されます。 濃厚な調味を施し煮熟した調味加工食品である佃煮は、水分、塩分、 糖分など調味成分の含有量や煮熟条件等により異なります。
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煮沸工程
○実際の製造過程
 北海道近海や中国、韓国産の乾燥こんぶを原料として、4%程度の酢酸水を撒布し、 1晩ねかせます。コンブを柔軟にして切断しやすくするとともに、 コンブの味を引き出す効果があります。その後切り口を揃え、目的に応じて角形、短冊形、 糸状など切り幅を決め、切断します。その後、切断されたコンブに付着している小石、 砂などの夾雑物を砂取機で振動、風圧などを利用して除去します。 さらに、コンブに付着している残りの夾雑物を水または70℃前後の温湯で、 吸水を極力低く抑えるため短時間に洗浄、除去します。
 洗浄、計量後のコンブに醤油、化学調味料、カラメルなどから調製した調味液を加え、 70℃下にて1晩浸漬し、十分浸透させます。続いて、釜に移し、 必要量の砂糖を加えて煮込みます。火勢は沸騰するまでは強火で炊き、 その後は火を弱めコンブが軟らかくなるまで、ときどき攪拌しながら煮詰めます。 煮上がる少し前に水飴を加え、火を止めてから十分むらします。強火で煮熟を継続すると、 調味液のみ濃くなり、コンブが硬く、歩留まりは悪く、製品価値が著しく低下します。
 水分蒸発量、煮汁の量、コンブのテクスチャー、形の保持などから判断し、煮熟、 味付けが終了すれば、釜から揚げます。釜揚げしたコンブをただちに平台に広げ、 適量の煮汁をまぶしながら清浄な空気で急冷します。 冷却には真空冷却機を使用することもあります。計量、包装して製品とします。 保存性を高めるため、脱気包装後、熱湯の入った殺菌槽にて加熱し、製品とすることもあります。
●製造工程図
原料 (乾燥こんぶ)
水掛け (4%程度の酢酸水を撤布し1晩ねかせる)
切断整形 (角形、短冊形、糸状)
砂おとし (砂取機、金属探知器)
洗浄
漬け前 (予備漬け)
 調味液に1晩浸漬
煮熟
釜揚げ
まぶし (適量の煮汁を撤布)
冷却
計量・包装加熱殺菌
 
出荷 出荷
○製造装置
 装置としては、コンブの砂を落とす砂取機、角形や短冊形にコンブを細かく切る コンブ切断機や煮熟のための煮熟装置に加え、冷却装置や金属探知器等があります。 煮熟装置は、攪拌装置の付いた二重釜が使用されています。 二重釜は直火式に比べて蒸気による熱の調節が容易であり、大量生産に適しています。
 冷却機としては扇風機や送風機が利用されていますが、送風冷却時に 微生物が製品に付着しないように、浮遊菌や冷却台等の衛生対策には十分注意を払う必要があります。 最近は、微生物の二次汚染を防ぐために、バッチ式の真空冷却装置も使用されています。
○製品の形態・包装等
 トレーに入れたラップ包装や合成樹脂製容器で包装します。包材は耐熱性に優れ、 ガスバリヤ性の高いポリ塩化ビニリデンやナイロン等の包材を用い、 真空包装あるいは含気包装します。また、二次汚染による微生物を殺菌するため、 脱気放送後、蒸気等により再加熱して製品とするところもあります。
○安全・衛生管理
 佃煮は一般に保存性は高いが、最近は消費者の嗜好に合わせ、 調味の薄い浅炊きタイプの製品も多くなってきてます。そこで、保存性を高めるために ソルビン酸やソルビン酸カリウムが用いられることもありますが、 使用に当たっては食品衛生法で認められている範囲で使用しなければなりません。 また、より安心で安全な製品を提供するために、カビ等の微生物の二次汚染が 生じやすい冷却工程での真空冷却装置の利用や包装室の無菌室化、異物の混入を 防止するための金属探知機の設置等、製造工程での衛生管理や製品検査の徹底等の 安全性確保対策を講じることが必要です。
○成分の特徴
 原料のコンブは糊性のあるアルギン酸やマンニットなどの整腸作用をもつ多糖類、 また、旨味成分の1つであるグルタミン酸のほか、ヨード、カルシウム、 食物繊維を多く含んでいます。
○食べ方
 主に、ご飯の副食やおにぎりの具、お茶うけとして利用されています。

執筆者:東京都立食品技術センター 沼田 邦雄