かにみそ

○かにみそとは
 かにみそとは、かにの内臓のうち中腸線のことで、肝臓とすい臓の 機能を持つことから肝すい臓とも呼ばれています。姿のまま茹でた かにの胴体内部中央にあるもののほか、缶詰やびん詰として市販されているものは、 この部分を加熱、調味した製品で、どちらも濃厚で独特の風味があります。
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かにみそ
○生産と消費の動向
 兵庫県では昭和30年代にはズワイガニが原料として使用されていましたが、 ズワイガニのブランド化や、資源の減少、また40年半ばからベニズワイガニ漁が 盛んになったこともあり、現在では生から生産するかにみそはベニズワイガニを 原料としたかにみそが主流となっています。
 日本海側を中心に生産されていますが、生産量の実態は把握されていません。 兵庫県香美町香住の老舗加工業者では、年間約100tの製品を生産しています。
 濃厚で独特の風味があり、土産物や料理素材として人気があります。 また最近では回転寿司のネタとしてもよく使われています。
○原料選択のポイント
 かにみその原料となるベニズワイガニは、9月~翌5月30日に、 北海道から島根沖にかけての日本海および銚子以北の太平洋で漁獲されます。
 兵庫県香住町(2005年5月から香美町香住)では年間約3千t前後の ベニズワイガニが水揚げされており、地物で足りない場合は原料を 鳥取県境港産などの日本海産で補っています。
 生のかにみそは酵素活性が強く非常に鮮度低下が早いため、 水揚後すぐに加工する数件の加工業者から、ころころと形が残った鮮度の 良いものだけを午前中に回収します。
○加工の原理
 生のかにみそを加熱することで酵素を失活させ黒変を防ぐとともに、 独特の風味を引き出すのに必要なわずかな調味料を加えて炊き上げて ペースト状にします。これを容器に充填し保存性を付与するために加熱殺菌します。
○実際の製造過程
 原料は、9月~翌5月30日に採取した香住産ベニズワイガニの生原料と、 漁獲時期や漁獲量の加減から鳥取県境港産冷凍原料を使用します。
 最初に、真水で水洗いしたのち、ふるいで比較的大きなゴミを除去し、 煮釜で加熱攪拌しながらかにみそを溶かします。その後、細かいメッシュで 比較的小さなゴミを除去します。
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二重釜
 続いて、蒸気二重釜で沸騰させないように、少量の調味料で味を整え 炊き上げます(歩留まり35~40%)。炊き上がったら、水冷にて20℃以下に 冷却し、金属探知器による検査を行います。さらに、熱水シャワー式レトルトで 115℃で40分間の殺菌を行います。最後に、自動ラベラーを使用し品名、 賞味期限などを印字し、ダンボールに詰め出荷します。
●製造工程図(かにみそ缶詰)
原料 形状、色、臭い
ゴミの選別 ふるい、目視
加熱 煮釜で加熱攪拌。
異物除去 カニ殻ほか。
調味配合・炊上 加熱攪拌(時間は状態による)
冷却 20℃前後
充填 巻締、計量、金属探知機
殺菌
冷却 20℃前後
包装
製品
○製品の形態・包装等
 缶詰が主流ですが、最近では中身が見えるびん詰や、 冷凍品としてプラスチック容器で包装したものもあります。
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かにみそ製品
○表示
かにみそ(かにの内臓)、調味料(アミノ酸等)
○品質管理のポイント
 びん詰では180日以上保存可能であり、 缶詰なら直射日光を避ければ常温で1年以上保存可能です。
○安全・衛生管理
 原料は、酵素活性が強く鮮度低下が早いため、新鮮な原料の入手に努めるとともに、 原料に含まれるかに殻や鰓などの異物除去に気をつけています。土産物は 常温流通する場合が多いので、容器に合わせて殺菌温度や時間の設定を厳密に行っています。
○成分の特徴
かにみそ缶詰100g当たり
エネルギー243kcal
水分58.7g
タンパク質14.9g
脂質17.8g
炭水化物5.9g
灰分2.7g
ナトリウム649mg
○機能性成分
 世界三大珍味の1つでありますフォアグラやあん肝と同じように脂肪や グリコーゲンを豊富に含んだ、まさにカニのレバー的存在です。 また、かにみその特有のうまみはイノシン酸などの核酸によるものです。 こうした成分は旨味の素であるばかりか、細胞を活性化させ、 老化を予防する働きがあるといわれています。
○食べ方
 茹でがにの場合はそのままか甲羅焼きにしてたべます。最近では、 加工品の種類も豊富となり、かにみそのびん詰、冷凍品などのほかに かにみそを利用した製品として卵豆腐に仕立てたかにみそ豆腐や、 かにの身を全体の50%加えた身入りかにみそなども販売されています。 これらはそのままごはんや酒の肴に、ゆで卵の黄味と合わせたり、 野菜と煮てお惣菜として、また寿司種として利用できます。
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たべかた
○かにみその歴史
 かにみそが生産されるようになったきっかけは、山陰海岸屈指の ブランドであります「松葉ガニ(ズワイガニ)」が、昭和30年頃上屋に並ばす、 屋外で売られ無尽蔵と思われた時代、保存技術もなくあしも早いかにみそは、 廃棄物扱いされていましたが、それを回収してドラム缶で煮詰めて、 保存目的として豆味噌を加えたものを観光客などにその場で振る舞ったのが、 始まりだそうです。
 昭和30年半ばには、いち早く缶詰技術を利用して、保存が可能となった かにみそは全国に出回るようになりました。

楠田忍、中村義則(マルヨ食品(株))