灰干しわかめ

○灰干しわかめとは
 鳴門わかめとして有名な灰干しわかめは、養殖もしくは天然の新鮮なワカメに、 シダやススキ、わらなどの草木灰をまぶしたのち天日干しし、灰がついたまま製品とする海藻干製品です。 素干しわかめに比べ、鮮やかな緑色、歯ごたえの良さ、ワカメ特有の香りを、 常温で1年以上保つことができるのが特徴です。    灰干しわかめ
灰干しわかめ
○生産と消費の動向
 灰干しわかめは、徳島県の鳴門市や里浦町、兵庫県の南あわじ市西淡町など 鳴門海峡に面した地域では150年以上前から、北陸や東北地方でも古くから生産され続けてきました。 しかしながら、最近は草木灰の減少、後継者不足、環境問題などで生産量が年々減少傾向であったことに加えて、 平成12年1月に施行されたダイオキシン対策法で、 灰干しわかめに使用する灰をつくる小型焼却炉が規制の対象になったため、良質の灰の確保が困難になり、 灰干しわかめの生産がほとんどできない状況になっています。
 徳島県を例にあげると、昭和58年には450件、平成10年には200件ほどあった経営体が 年間300tの生産を行っていました。平成12年2月の県からの指導により、 灰干しわかめから湯通し塩蔵わかめや活性炭を用いた炭干しわかめへの転換が図られたことにより、 この年以降灰干しわかめの生産を行わなくなりました。 他の県でも生産量は大幅に減少しています。
 このように生産者の減少が続く中、各地で灰干しわかめのブランドを守り伝統を絶やさぬよう懸命の努力も 続けられています。兵庫県では地元漁業者や西淡町が県の試験研究機関と共同で、 従来品と同じ品質の灰干しわかめを生産するため”灰干しわかめ用の新しい灰”の開発試験を行っています。 富山県朝日町では、地元農家と協力して米のわら灰を確保し、灰干しわかめの生産を続けています。
 灰干しわかめは、品質の良さと常温で長期間保存できる利便性から、 地元の民宿やホテルの料理に使われているほか、土産物やふるさと便など、 昔からの固定客や観光客などに根強い人気があります。
○原料選択のポイント
 養殖ワカメは2月上旬~中旬、 天然ワカメは3月下旬の漁期はじめの色落ちの無いものが良いとされています。 天然ワカメは養殖ワカメに比べ、葉が厚くやや硬い傾向があります。 場所によっては、天然ワカメだけを用いており、5月中旬~下旬のものが良いと言われています。 また、灰については従来はシダやススキ、米のわらなどの草木灰をまぶしていましたが、 これらの減少に伴い最近では活性炭等の活用も試みられています。
○加工の原理
 ワカメに灰をまぶして乾燥させることにより、次のような効果があります。
ワカメに付着した灰自体が水分を吸水するとともに、 灰の粒子によりワカメ葉体の表面積が大きくなり、 水分の蒸発効率が高まる。
灰が付着することで葉体どうしがひっつきにくくなり、 風通しが良くなるため、水分の蒸発効率がさらに高まる。
灰が付着することで太陽光線を遮断し、 紫外線によるクロロフィルの分解を抑え緑色が長期間保持される。
ワカメをアルカリ性にすることで、 葉体の生理活性(酵素作用)を停止させ、 軟化およびクロロフィルの分解を抑えることで歯ごたえが良く、 緑色が長期間保持される。
灰に含まれるカルシウムの働きで、ワカメに含まれるアルギン酸が 水に溶けにくいアルギン酸カルシウムになり、葉体の軟化を防ぎ、 葉ごたえが良くなる。
加工工程中に加熱処理がないことから、 ワカメ特有の香りが良く保持される。
乾燥することで水分活性を低下させるとともに、 アルカリ性にすることで微生物の繁殖やカビの発生を 常温で長期間防ぐことができる。
○実際の製造
 兵庫県で行われている製造の仕方を例にあげて説明します。
 2~3月に刈り取った養殖ワカメと、3~4月に刈り取った天然ワカメを原料に使用します。 早朝に刈り取った時や、量が少ないときは脱水機で、午後から刈り取ったときや量が多いときは、 すのこの上で一晩放置して脱水します。

●製造工程図
原料
脱水
灰まぶし
乾燥
保管
袋詰め
製品
 つぎに、ワカメ20kgに対して灰を約4kgを灰まぶし機に入れて10分程度まぶします。 その後、棒やひもにかけ、日中は天日干し夜間は吸湿を2~3日繰り返し行います。 土産物用は200g、地元の民宿やホテルの料理として使う業務用は、1kgをポリ袋に入れ密封します。 吸湿させなければ、常温で1年以上保存可能です。 脱水機
脱水機
灰まぶし機
灰まぶし機
灰まぶし工程
灰まぶし工程
天日干し工程
天日干し工程
成分の特徴
 ワカメには食物繊維、アルギン酸、カルシウム、ヨウ素が豊富に含まれています。 食物繊維は腸内環境を整える働きがあり、アルギン酸はコレステロール値を下げます。 またカルシウムは骨の構成成分で脳神経細胞の安定を図る作用があり、 ヨウ素は体の抵抗力を高め新陳代謝を活発にします。
○食べ方
 水洗いして灰をよく落とし、ふきんかキッチンペーパーで水気をとります。 つづいて、適当な大きさに切って、刺身のつま、酢の物、みそ汁の具として利用します。 湯通しをせずに使った方が、灰干しわかめの特徴である歯ごたえ、香りがよく味わえます。

森 俊郎(兵庫県立農林水産技術総合センター)