あじ開き干し

○あじ開き干しとは
 あじ開き干しはアジを腹開きにして、塩水に浸して干したものです。日本の食卓に並ぶもっともポピュラーなおかずの1つであり、海辺の観光地のお土産品としても、みなさんすぐに思い浮かぶことでしょう。
 近年では、消費者の嗜好の変化から、塩味の薄いものが好まれる傾向あります。三訂版日本食品標準成分表(昭和38年)によると、あじ開き干しの塩分は3%となっていましたが、近年発行された五訂増補日本食品標準成分表(平成16年)では1.7%と減少していることからも一目瞭然です。
○原料選択のポイント
平成14年のあじ塩干品の全国生産量は5万5千トンで、近年の生産量はやや減少傾向にあります。都道府県別の生産量は静岡県が多く、そのシェアは4割強程度となっています。そのほかでは千葉、神奈川、茨城、三重などの順になっています。
あじ塩干品生産量
あじ塩干品生産量
水産物流通統計年報より引用
○原料選択のポイント
 あじ開き干しには、マアジ、マルアジ、ムロアジなどが使われていましたが、現在はほとんどがマアジとヨーロッパマアジとなっており、ムロアジが多少ある程度となっています。
 マアジは東シナ海や五島列島、対馬近海産(長崎、佐賀県唐津、福岡で水揚げ)や日本海の境港、浜田、千葉県の銚子などで水揚げされた天然魚が主に用いられています。養殖魚はあまり使われないようです。
 ヨーロッパマアジは昭和50年代前半から使われ始めたが、安定的に供給されるという利点があることや、国内産のマアジの漁獲量が減少したことから、近年は急速に使用量が増加してきており、マアジとヨーロッパマアジの使用される割合は半々程度となってきています。産地はオランダ、アイルランド産が多くなっています。
 ある程度脂肪がのっている原料が好まれ、脂肪量が7%から16%くらいの原料が使われていますが、10%以上のものが良質と言われています。
○加工の原理
 食塩を中心とした調味液(「塩汁」と呼ばれている)に浸けることによって調味するとともに、水分活性を下げ、雑菌の繁殖を抑制します。また乾燥することによっても水分活性は下がり、保存性が増すとともに、色合いが良くなります。
○実際の製造過程
 原料は水揚げ後、-30℃で急速凍結され搬送されます。水氷は最近では使われなくなってきています。搬送された原料は-30℃以下で保管されています。ヨーロッパマアジも漁獲直後に急速凍結されて日本に輸出されています。解凍方法は、流水によって解凍します。以前は「塩汁」によって解凍することもありましたが、最近では使われなくなりました。流水を使った解凍機を用いて解凍する所もあります。
 つづいて内臓・鰓を除去して腹開きにする。この工程はすべて手作業で行われています。その後残った内臓などを洗浄します。その後塩水浸けの工程に入ります。「塩汁」の濃度は低くなる傾向にあり、以前は15~24%程度でしたが、現在では10~20%程度となっています。この塩汁に20~40分間浸けますが、この時間は原料の質に左右されます。「塩汁」は食塩が主ですが、食塩以外については各工場によって独自の工夫がされています。「塩汁」は5℃程度の低温で循環させるなどして管理され、1ヶ月程度使用できます。加熱処理することによって長期にわたり使用している所もあります。
 いよいよ乾燥の工程に入ります。その前に、余分な塩汁は洗浄して洗い流しておきます。天日乾燥は最近ではほとんど用いられなくなりました。30~35℃の温風で30~100分乾燥させるのが主流ですが、近年では30℃以下で除湿乾燥をかける方法も増えてきています。完成した製品は急速凍結して-30℃以下で保管されます。
○製品の形態・包装等
 市場に出荷する場合、発砲スチロール箱を使い20枚程度詰めて出荷します。近年は市場を通さずに直接小売店へ卸すことも増えてきており、この場合はトレーやポリ袋で2~3枚入れて包装し、冷蔵庫を使って出荷されます。
あじ開き干しの出荷形態(市場出荷の場合)
あじ開き干しの出荷形態(市場出荷の場合)
あじ開き干しの出荷形態(小売店に直接卸す場合)
あじ開き干しの出荷形態(小売店に直接卸す場合)

岡田裕史(静岡県水産試験場)