第5回アワビ類天然稚貝調査法ワークショップを開催

 平成29年5月26日(金)に、都府県水試12機関から14名の受講者を迎えて、「潜水によらないアワビ類稚貝の調査方法」という内容で、横須賀庁舎と周辺の海岸にて体験型講座(ワークショップ)を開催しました。
 アワビ類には、大型アワビと小型アワビ(トコブシ類)があり、前者は更に暖流系アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ)とクロアワビの北方型亜種であるエゾアワビがあります。近年、特に大型の暖流系アワビ類の漁獲量が減少しています。その原因は、乱獲や生息環境悪化による親貝の減少と、それにともなう産卵量の低下と稚貝の減少、磯焼けによる餌の減少、密漁等さまざまな想定があります。しかし、減少要因が明確でない場合が多いことから、このワークショップでは、要因解明のためのツールとして、いつ大きく減耗しているか、そもそも稚貝が発生しているかについて調査する手法をテーマとしました。殻長1cm以下の稚貝の発見は初心者の場合は難しいことに加え、職員による潜水調査が実施できない研究機関が増えています。そこで、ワークショップでは、潜水せずに簡単に実施できる調査方法を紹介しました。
 午前中の干潮時間帯は、現場でのアワビ稚貝探索・採集、環境調査などについての実地体験と講義を行い、横須賀庁舎周辺の岩礁海岸に出向いて、どのような場所のどのような石にどんな形でアワビ類の稚貝が棲んでいるのか、どうやって調べるかについて体験していただきました(実際に採集を行ったのは特別採捕許可を受けている当所職員)。午後は、当所職員による採集物の種査定や測定などの処理についての講習を行いました。また、瀬戸内海水産研究所生産環境部濱口昌巳氏と中央水産研究所水産生命情報研究センター丹羽健太郎氏を講師に迎え、外観からの判別が不可能な暖流系アワビ類の遺伝子解析による種判別手法についても、講義と実習を行いました。
 本ワークショップは、横須賀庁舎で毎年開催していて、今回で5回目となりましたが、いまだに多数の参加者があることを考えると、開催する意義を強く感じます。発見された稚貝の密度はわずか100m程度の距離でも大きく異なり、稚貝の加入がわずかな地形の違いに影響されていることを実感していただけました。参加者のみなさんが、ワークショップでの体験をそれぞれの地元フィールドで生かして、アワビ類の資源回復に向けて活動されることを期待しています。

Highslide JS
調査方法の説明
Highslide JS
実習風景(フィールド調査)
Highslide JS
実習風景(実験室での測定など)
Highslide JS
見つかったアワビ類稚貝
Highslide JS
実習風景(実験室での測定など)
Highslide JS
遺伝子解析による種判別実習

lime