ノリに定着、共生している細菌叢を網羅的に調べる
研究課題名:ノリの形質発現に及ぼす定着(共生)細菌叢の役割解析
実施年度:平成20年度
水産遺伝子解析センター 上席研究員 大原 一郎

目的


 ノリの形質に影響を与える要因としては、古くから知られている水温、日長、塩分濃度等がありますが、最近、ノリの形質には細菌が関係していることが明らかになりつつあります。たとえば、無菌状態で育てられたノリに細菌を投与することにより、ノリの葉状体の発育が促進されることがわかっています。しかし、ノリにどのような細菌叢(さいきんそう)(フローラ)が関わっているのかを調べようとした仕事はこれまでのところありませんでした。そこで、ノリの形質発現に及ぼす細菌叢の役割解析の第一歩として、ノリに関わる細菌叢の網羅的な解析をし、基礎的知見を集積することを目的としました。

方法


 実験の方法としては、ノリに定着している細菌をノリ葉状体または糸状体と一緒に集め、そこから総D N A を抽出し、PCRという方法(酵素を利用して特定領域の遺伝子を増複する方法)で16S rRNA 遺伝子の部分を増幅しました。このときノリDNAに比べて細菌のDNAが選択的に増幅されやすいようにPCR を工夫しました。増幅したDNAをクローニングして、1試料あたり200クローンの塩基配列を片端から決定しました。得られた配列をデータベースで相同性検索して、それらの配列がどのような細菌と遺伝的に近縁であるかを調べました。

結果と解析


 得られた結果を図1の系統樹に示しました。全部で18種類の細菌が見つかりましたが、これらはαプロテオバクテリア、γプロテオバクテリアと、広い範囲の細菌をカバーしていました。糸状体と葉状体の両方ですべての実験区に現れた細菌はMarinobacter sp という細菌でした。この細菌を分離・培養することにも成功しました。

図1.得られた共生細菌の分子系統樹

波及効果


 今後は、ノリへの細菌の投与実験を行うなどして、細菌とノリとの共生関係解析等へと研究の展望が広がっています。