高ATP 含有微細化魚肉の開発 | |
研究課題名:ナノスケールによる水産物の品質保持・加工特性改善技術の開発 実施年度:平成20年度 |
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利用加工部 素材開発研究室 村田 裕子 品質管理研究室 平岡 芳信 室長・今村 伸太朗・木村 メイコ |
従来のねり製品は、通常、タンパク質濃度の向上とゲル形成に不都合な水溶性タンパク質等を除くために水さらしを行いますが、その際に呈味成分などの水溶性成分も同時に損失します。このような水さらしを行ったすり身などは、凍結保存する場合も多く、冷凍変性を抑制するために、ソルビトールなど糖を添加します。
生きた魚の筋肉中にはATP(アデノシン-三リン酸)が含まれ、死後、ATPは5℃ の貯蔵でも6時間くらいで消失してしまうため、多くの場合、ATP の消失した状態で加工されます。ATP には筋原繊維タンパク質の溶解性を高め、ゲル形成性を向上する効果やタンパク質の冷凍変性抑制作用があると言われています。そこで、高A T Pを含有した魚肉を用いて、ATPを保持した状態で微細化を検討しま した。
活アジを即殺し、速やかに筋肉を採り、カッターミルで90秒間処理を行うと、高ATP含量を保持した粘性のある微細化物となるので、そこで処理を終了します。この微細化物のゲル形成能を測定し、さらに2.5ヶ月間冷凍保管した後の筋原繊維タンパク質の溶解度とゲル形成能の測定を行いました。比較のため、取り出した筋肉の一部を6 時間冷蔵し、ATPの消失したものについても同様の試験を行いま した。
高ATP 含有微細化魚肉は水晒しなしでもゲル形成性が向上し、冷凍変成も抑制されました。また、高ATP 含有微細化魚肉は、低ATP含有のものに比べ、低塩でもゲル形成能が高く、とくに冷凍保管後もゲル形成性、筋原繊維タンパク質の溶解度は高く保持されていました。無晒しなので魚肉のおいしさもありました。さらにATPの消失魚肉にATPを添加しても同様な結果が得られました。 (特願2008-266748)