国産サケ市場の生き残り戦略とは?
~グローバルとローカルの視点~
研究課題名:国産さけ・ます類の安定的需給に必要な経営経済的条件の解明
実施年度 :平成18~22年度
水産経済部 水産政策研究員 清水幾太郎

目的


 国産サケの市場への流通は決して順調ではありませんでした。国際経済の波に翻弄され長期的な価格低下が続いた経緯を分析し、価格の安定化および国産サケの増殖戦略を練らなければなりません。個々のふ化放流事業の現場が取り組む戦略と国産サケの輸出を軸としたグローバル戦略及び国内市場を対象とするローカル戦略を結びつける方向性を明らかにし、国産サケ資源を支えるふ化放流事業の役割を考えました。

結果と解析


【市場の動向分析】
 塩蔵サケの原料として1970年代まで価格の高かった国産サケは、回帰資源と輸入サケの増加の影響を受け1980年代から価格が低下しました。1990 年代に消費者の嗜好が塩蔵から生鮮に移り、国内市場では供給が需要を上回り価格低下が続きました。しかし、低価格化したことで中国に輸出されたサケは加工され、EU 向けに輸出されました。このようにグローバル商材化したため、2000年代前半から輸出が価格を下支えし、価格回復が見られました。

【能動的な戦略の検討】
 価格低下の原因は国内市場への供給過剰と消費者ニーズへの対応の遅れと把握されました。北海道の消費者へのアンケート結果から、国産サケは高鮮度、高品質と価格が購入の必須条件です。安全な商品づくり(HACCP対応)、エコラベル認証への取り組み、省エネ漁業である定置網漁業による資源の安定的確保が国産サケの戦略に重要です。特にHACCP 対応の安全な商品づくりは国内への製品供給にもつながります。

【グローバル視点の戦略を!】
 安定した回帰の継続による国産サケが国内外の市場へ適正な価格で流通することは、ふ化放流事業に必要な増殖経費の安定化につながります。つまり、ふ化放流事業のローカル戦略を構築するためには、世界の動きを読み取るグローバルな視点の戦略が必要です。

波及効果


 本研究の成果から、国産サケは増殖から漁業・流通を通じてグローバルな戦略をとることによって、国内市場の需要拡大につながる ことが期待されます(図1)。

図1.国産サケのグローバル戦略とローカル戦略

発表


  1. 清水幾太郎(2009):ふ化放流事業のローカル戦略によって支えられる国産サケのグローバル戦略. 国際漁業研究 第8巻第1-2号:95-104.
  2. 清水幾太郎(2009):秋サケを巡る環境変化に増殖事業の現場はどう対応してきたか. 漁業と漁協 8月号:22-25.