下痢性貝毒ペクテノトキシン6の精製と毒性評価

- 下痢性貝毒ペクテノトキシン6(PTX6)は,わが国のホタテガイ(Patinopecten yessoensis )の主要毒であり,有毒プランクトンが生産するペクテノトキシン2(PTX2)のホタテガイ代謝物です(図1)。これらの毒は,下痢性貝毒公定法(マウス腹腔内投与試験)による致死毒性により発見され,現在は下痢性貝毒として規制の対象となっています。
- 近年, PTX2の毒性評価が各国で行われており,経口投与ではPTX2には下痢原性がないことが明らかになり,下痢性貝毒の規制対象から除外する方向で国際的な議論が進んでいます。
- PTX6の経口毒性については明らかにされていないため,本研究ではPTX6をホタテガイから大量に精製し,マウスやラットを用いた病理学的毒性試験や吸収試験により,その経口毒性を評価しました。

- PTX6を6.1mg 精製し,H-NMR やMS スペクトルの解析により,毒性評価試験に利用できる高純度であることを確認しました。
- 海洋生物毒としては極端な高濃度といえる2-7mg/kg b.w. のPTX6をマウス及びラットに経口投与して毒性の有無を調べましたが,病理学的な観察では顕著な毒性は確認されず,経口毒性のリスクは極めて低いことがわかりました。
- PTX6は経口投与では下痢原性を示さないことが明らかになりました(図2)。
- マウスにPTX6と下痢性貝毒オカダ酸を同時投与して,下痢原性の発現におけるPTX6の相乗作用を調べました。その結果,PTX6の相乗作用は確認されませんでした。

図1 ペクテノトキシン6

図2 ペクテノトキシン6を経口投与したマウス腸管の重量%(マウス体重比)。下痢原性が見られる場合は,顕著な腸管重量の増加が見られる。

PTX6は経口毒性のリスクが極めて低く,また,下痢原性がないことが明らかになり,国際的な動向に対応し,PTX6を下痢性貝毒の規制対象外とするための科学的データを得たことにより,将来の規制改正に向けて基盤を整えることができました。