研究のうごき、6-15

アユの遡上量を予測する


 アユの資源量は年変動が大きく,漁獲量は全国的に減少傾向にあります。とくに,日本海沿岸河川では平成15-16年にかけて遡上量が激減し,内水面漁業の経営や地域産業に深刻な影響を与えました。アユの遡上量を事前に予測することができれば,それに応じて放流尾数を決定するなど計画的な増殖が可能となります。本研究では,沿岸域におけるアユの生態を調査し,遡上量を予測するモデルの開発を行いました。


  1. アユの河川への遡上量は,日本海沿岸の広い範囲で,同調しながら変動していることがわかりました(図1)。
  2. 海で生活するアユ仔魚の分布は,河川水の影響がおよぶ河口周辺5km 以内の沿岸域に限定され, 主にカイアシ類などの動物プランクトンを摂食していました。
  3. 日本海沿岸のいくつかの集団では,10月の沿岸海水温が高 い年ほど翌年の遡上が多い傾向がみられました。一方,太平洋沿岸集団では海水温との明瞭な関係は認められず,和歌山県日高川では10月の降水量が多い年ほど翌年の遡上が多いという関係が認められました(図2)。
図1 遡上量の同調パターンに基づくクラスター分析。
日本海沿岸集団では広域で遡上量が同調する傾向が認められる。これに対して,太平洋側沿岸河川では地理的に近接する集団で遡上量が同調する。
図2 山形県鼠ヶ関川(左図)および和歌山県日高川(右図)における遡上量変動と予測。
●実測値、遡上量と沿岸海水温(鼠ヶ関川)、降水量(日高川)との関係から得られた予測値。


  1. アユの資源変動を理解する基礎資料として活用できる。
  2. 予測モデルを活用して,地域のアユ漁業関係者に遡上量の情報を事前に提供することができる。