研究のうごき、6-11

現場飼育実験手法を用いてアサリの成長生残に影響する環境要因を調べる


 アサリ生産量の減少要因として干潟の餌環境の変化が挙げられているが,干潟環境は極めて多様なため,アサリの成長や生残に影響している環境要因はまだ良くわかっていない。そこで,どのような要因が餌環境の良し悪しを決めているかを調べる目的で,千葉,愛知,熊本,大分各県の干潟で現場飼育実験を行い,環境要因との対応を調べた。


  1. 底泥表面の粒状有機物のC( 炭素)/N( 窒素)比が大きいと,アサリの生残率(2週間で生き残った個体数の割合)は低下したことから,植物の細胞壁が多い(おそらく陸生植物由来の遺骸が多い)環境はアサリの生残に不適と考えられた。
  2. 干潟の中でも海水の絶対流速の運動エネルギーが高い場所でアサリの成長が遅かったことから,強すぎる流れはアサリの成長に悪影響を及ぼすと考えられた(図2)。
  3. 海底直上水の懸濁物中に含まれるクロロフィル量の比率が高いとアサリの成長が速かったことから,浮泥などのアサリの餌とならない粒子がアサリの摂餌を妨げている可能性が示された。
図1.実験に使用したケージ(円柱状)及び流速計。ケージの中に測定し個体識別したアサリを入れ,各干潟で2週間飼育した。
図2.アサリの成長と干潟上の海水の流れ
海底直上の海水の流向速度を自記式測器で連続測定したデータから絶対流速の全運動エネルギーの時間平均(Vrms))を計算してアサリの現場飼育期間中の殻長成長速度との関係を調べた。

  1. 実験結果を「干潟生産力改善のためのガイドライン(水産庁,2008年2月)」に反映させた。
  2. アサリ漁場の管理や漁場造成のための基礎情報として参考となる。