研究のうごき、6-09

土佐湾におけるマイワシ稚魚の成長解析


 日本近海のマイワシは,数十年の間隔で大規模な増減を繰り返してきた。資源水準は1990年代以降急低下し,現在は大変低い状態にある。一方,土佐湾には毎年親魚が来遊し,産卵量は安定して推移しており,日本全体のマイワシ資源の大変動とは異なっている。土佐湾の個体群は将来マイワシ資源が増加に転じる端緒となる可能性がある。本研究ではこの海域で孵化,成育するマイワシ稚魚の成長を詳しく解析して,成長の季節変化と年変動を把握し,マイワシ個体群の大規模な変動の要因を明らかにすることを目的とする。


  1. 土佐湾東部の安芸市沖の沿岸域でイワシ類稚魚を漁獲するシラスパッチ網漁船の協力を得て採集したマイワシ稚魚を材料とし,耳石( じせき) に毎日1本ずつ形成される輪紋を判読して孵化後の日数を求め(図1),成長を解析した。2006年11月から2007年2月までの月ごとに追跡した結果,成長の指標である極限体長は,11月が24.0mm,12月が26.2mm,1月が26.9mm,2月が37.2mm と,後になるほど大きくなった。図2に最小の11月と最大の2月を示す。
  2. 同様の材料と方法で,2004年から2007年までの2月の成長を比較した結果,極限体長は2006年(38.6mm)が最大で,2007年(37.2mm) が次ぎ,2004年(32.9mm) と2005年(29.5mm) は小さかった。図3に2006年と2005年を示す。マイワシシラスの水揚量は2006年が4年間で最も少なかったことから,成長の良否と個体密度に逆の関係があることが示唆された。
図1. マイワシ稚魚の耳石( 径0.201mm,輪紋23本,孵化後25日)。
図2. 2006年11月と2007年2月マイワシ稚魚の成長(実線はGompertzの成長式,破線は1日の体長の伸び)
図3. 2005年2月と2006年2月のマイワシ稚魚の成長(図2と同じ形式)


  1. マイワシの初期成長過程を検討することにより,魚類の成長と物理化学的環境および生物的環境との関係についての知見が得られる。
  2. マイワシ資源増加の端緒を捉えるとともに,資源変動の要因を解明して,本種の持続的な利用方策を策定する。