研究のうごき、6-07

組織学的観察による魚類産卵履歴の推定
-アユは一生に一回しか産卵しないわけではない


  1. 琵琶湖産のコアユは1産卵期に2回以上産卵(多回産卵)を行うことが知られていたが,仔稚魚が海で育つ普通のアユ(いわゆる海アユ;正式には両側回遊型アユ)はサケのように一生に1回産卵して死ぬものと考えられていた。
  2. 近年になって両側回遊型アユも天然で多回産卵を行っている可能性が示唆されたが,その検証は不十分であり,普遍性も不明であった。
  3. そこで,山形県の小河川(鼠ヶ関川)と大河川(最上川)において産卵期アユの採集を行い,卵巣の組織学的観察手法を改良することにより多回産卵の検証とその普遍性の検討とを試みた。


  1. アユ卵巣切片に対してPAS 染色を行うことで,産卵後時間が経った排卵後濾胞(卵を包む濾胞組織が産卵後も残ったもの;産卵の証拠となる)も検出可能となった。
  2. 排卵後濾胞の経時的変化をもとにしたタイプ分けを行った結果,産卵期の後半では大部分の卵巣において2種類または3種類の排卵後濾胞が検出され(図1),両側回遊型アユにおいても多回産卵が普遍的であることが明らかとなった。
  3. 現在,本染色法を含めた改良組織学的手法を用いることにより,重要海産魚のサバ類やサンマ等においても産卵履歴の推定が可能かどうか検討中である。
図1:産卵期後期のアユ卵巣で認められた3種類の排卵後濾胞(1-3).


  1. これらの手法を用いることにより多様な魚の産卵履歴が組織学的観察により推定できるようになり,経産魚と未産魚の区別も簡単に出来るようになることが期待できる。
  2. 各種再生産パラメーターや親魚量の推定精度が向上し,資源評価や資源管理に役立てることが出来る。