研究のうごき、6-06

若年漁業者が存在する条件


 漁業生産の担い手は,水産業の健全な発展や国民に対する水産物の安定供給,さらには漁業地域の活性化に不可欠な存在である。にもかかわらず,高齢化が進行する一方で,新規確保が困難な状況が続いている。そこで,漁業の就業構造を統計的に分析して,若年漁業者(39歳以下)が存在する条件を明らかにした。


  1. 若年漁業者は,減少傾向から転じて,1998年から2003年にかけて増加した。この動きは,失業率の上昇といった雇用情勢の悪化と関係が認められたことから,若年漁業者の動向は,漁業外の労働市場条件の影響を受けることを明らかにできた。
  2. 経営体階層別の年齢構成をみると,3~5t 階層以上では上位階層ほど若年漁業者が多かった。ただし,1t 未満階層に副業的な従事者の存在も確認できた。また,漁業種類別にコーホート分析を行った結果(図1,2),若年漁業者の加入は,自営漁業では養殖業と低投資型の漁家漁業,雇われ漁業では沿岸の雇用型漁業で多いという傾向を特定できた。このことから,若年漁業者の存在条件を理解するためには,漁業規模に加えて従事形態に目配りが必要であるという示唆が得られた。
  3. 後継者がいる個人経営体の割合と各種指標の相関をみた結果,漁獲金額と強い相関を示し,特に500万円以下の経営体割合と相関(r =- 0.7813)が最も強かった。よって,若年漁業者は水揚金額の影響を受け,500万円付近にボーダーラインがあることを特定できた。
  4. 以上の結果を基にして,今後は生産現場における聞取調査や若年漁業者のアンケート調査を実施することで,若 年漁業者の動向に関する知見を獲得し分析を深化させたい。


今後の漁業就業者の確保対策や漁村の過疎化対策の立案に役立てることができる。