研究のうごき、6-05

日本近海クロマグロを対象とした漁業の実態


 まぐろ類の需要は国際的に増大しており,日本近海のクロマグロも価格の上昇が予想される。このことから漁獲圧力の高まりによる資源の減少や,WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の発足にみられるような資源管理による漁獲量の規制等が想定される。また,クロマグロ養殖用の天然種苗の需要が増大していることから,同様に漁獲量の減少・規制が想定される。

 このような背景があることから,漁業経営の効率化・安定化を検討するためには供給構造(経営実態)の解明が不可欠である。本報告は,この調査の一環において把握した日本近海クロマグロを漁業対象とした漁業実態について概要を述べる。調査対象地は,まき網漁業(鳥取県境港市),はえ縄漁業(沖縄県),定置網漁業(新潟県佐渡市),ひき縄漁業(長崎県対馬市)である。


①鳥取県境港市で,クロマグロはベニズワイとともに重要な漁業対象種であり,特に,夏期においては主要な漁獲物であるため,地域にとって必要不可欠な魚となっている。さらに,近年は,地域活性化の目玉にすべく,イベントや地域の料理店等とタイアップする試みが見られた。②新潟県佐渡市も同様に地域の重要な漁業対象種であり,クロマグロを地域及び観光の活性化に役立てるために,漁業・商工関係者で検討中であった。③沖縄県では,かつてはそれほど重要な漁業対象種ではなかったが,現在はえなわ漁業の重要な対象魚種となっており,クロマグロは貴重な収入源となっている。また,近年,クロマグロを利用したマグロステーキが那覇市等でメニュー化され,新たな沖縄の名物になることへの期待も大きい。④長崎県対馬市の全漁業者のうち7割がひき縄漁業を営んでおり,さらに,ひき縄漁業の漁獲金額のうち約半分はヨコワ(クロマグロの稚魚)が占めており,地域においては欠くことのできない漁業対象種となっていた。このうち,活ヨコワは養殖クロマグロの種苗となり,脂の乗ったクロマグロとして流通する(図)。 このようにクロマグロは,日本の各漁業地域において,漁業経営のうえで必要不可欠な魚であるとともに,今後,地域の活性化を図るうえで重要な役割を担うことが期待されている。
図 対馬の養殖クロマグロ水揚


日本近海クロマグロを対象とした供給構造(経営実態)の解明に役立てることができる。