イワナの放流魚と天然魚の
競争関係を調べる
背景と目的
 イワナは渓流釣りの対象として人気が高い。本種では増殖のために,人工的に生産された種苗が各地で放流されているが,放流魚が天然魚の生態に与える影響はよく分かっていない。
 そこで、自然河川を1m×1m×0.7m(高さ)の囲い込み網で区切り,その中に放流魚と天然魚を同居させることで,天然魚の成長に及ぼす放流魚の影響を調べた。

成  果

  1. 天然魚だけの実験区(単独区)と天然魚と放流魚の実験区(混生区)を設け,実験開始から30日後の成長率を単独区と混生区間で比較した。実験区の密度と魚のサイズを同じにしたところ,天然魚の成長率は,単独区よりも混生区の方が有意に高かった(図1)。
  2. しかし,同居させる放流魚を天然魚より大型にすると,天然魚の成長率は単独区と混生区でほぼ同じとなった(図2)。
  3. 混生区の密度を単独区の2倍に高めた実験では,密度の高い混生区で成長率が低下した(図3) 。
  4. 以上の結果から,体の大きさが同じ場合,天然魚は放流魚より競争関係において優位となるが,優劣関係は両者の体の大きさによって変化すること,また過剰に種苗放流が行われた場合,天然魚,放流魚共に成長率は低下すると考えられた。

波及効果

  1. 天然魚の成長に与える放流魚の影響が検証された。
  2. 天然魚を保全し、かつ放流効果を高めるための漁場管理方法を提言できる。

図1. 天然魚の成長率。実験区の密度と魚のサイズは同じ。


図2. 天然魚の成長率。実験区の密度は同じ。ただし,放流魚は天然魚と比べてサイズが10%大きい。


図3. 天然魚の成長率。 実験区の密度は、混生区が単独区の2倍。魚のサイズは同じ。

問い合わせ先:内水面研究部(日光庁舎) 資源生態研究室(山本)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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