注射器を用いた
アワビ類の消化液採取法
背景と目的
 アワビ類が餌の海藻をどのように消化するのかを知る上で,海藻に含まれるセルロースなどの多糖類について,これらを分解する消化酵素の活性や,消化管内に生息する多糖類の分解細菌の種類や数を明らかにすることは重要である。これまでの実験方法では,アワビから切り出した肝膵臓の抽出液を使うため,アワビが死んでしまい,同一個体で続けて調べることはできなかった。
 そこで,アワビを生かしたままで消化液,具体的には消化管の内容液を,継続的に採取する方法を開発し,従来のやり方で得た肝膵臓抽出液の消化酵素活性,および消化管内に生息する様々な細菌の集まり,すなわち「細菌叢」と比較することで,実験用サンプルとしての使い勝手を検証した。

成  果

  1. 注射器を用いて,生きたアワビの胃から消化液を採取する手法を開発した(図1)。
  2. 海藻中の多糖類を消化する酵素の活性(アルギン酸リアーゼ・セルラーゼ・マンナナーゼ)を測定した結果,消化液の活性はいずれも肝膵臓の抽出液に比べて高かった(図2)。
  3. 消化液の生菌数は1.0×107 ※CFU/mL,肝膵臓の抽出液は2.1×108 CFU/gと,約20倍の差がみられたが,細菌叢は類似していた(図3)。
    CFU:コロニー(菌集落)として検出された菌数を表わす単位
  4. 消化液は肝膵臓からの抽出液の代わりに細菌種の分析や,消化酵素の活性測定に利用できることが明らかになった。
図3. 細菌種組成の比較

図1.アワビ生体からの消化液採取法

アルギン酸リアーゼ

セルラーゼ

b-1,4-マンナナーゼ
図2.消化酵素活性の比較

波及効果

  1. 同一個体から消化酵素活性の変化や細菌叢での変化を続けて観察することが可能となった。
  2. アワビ類における消化機構の発達過程の解明への応用が期待される。 
問い合わせ先: 浅海増殖部 生物特性研究室 (丹羽)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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