アサリの餌と栄養状態の
地域差を探る
背景と目的
 アサリ生産量の減少が全国的な問題となっている。効果的に資源を増やすためには生態学的な基礎情報が不可欠であるが,アサリではここが不足している。アサリは浮遊性あるいは底生性の微細藻類や,それらの死骸であるデトライタスなどを餌として食べると考えられているが,その詳しいことは不明で,それぞれの餌料価値も不明である。そこで,アサリの餌が何であるか,また餌の環境が貝の栄養状態,いわゆる身入りにどのような影響を与えるかを調べるため,各地の代表的な漁場で比較調査を行った。

成  果

  1.  安定同位体比の分析を行った結果,漁場間や漁場内でアサリの餌が異なることが示され,餌料環境の調査にはきめ細かいサンプル採集が必要であることがわかった。
  2.  H17年7月の調査時では、三河湾の小鈴谷と東幡豆,浜名湖の舘山寺と鷲津では底生性の微細藻類,それ以外では浮遊性の藻類を主な餌にしていることが示され,盤洲干潟の岸側の調査点では,淡水起源の餌の影響が強く見られた。
  3.  アサリの栄養状態は,底質表面のクロロフィルa濃度と正の相関,フェオ色素濃度とは負の相関関係にあったため,アサリにとってデトライタスの餌料価値は低いと考えられた。
図1.アサリの炭素安定同位体比
 炭素安定同位体比(δ13C)からその生物が食べている餌の起源を推定することができる。底生性の微細藻類,浮遊性の微細藻類,陸生植物のδ13Cに関する既往の知見から,それぞれの目安となる値を示した。
アサリの栄養状態と餌料環境の重相関分析
G = 4.9×10-5×C - 6.0×10-6×P + 0.067 (r = 0.80)
K = 9.4×10-5×C - 2.1×10-5×P + 0.23 (r = 0.84)
 G:グリコーゲン含量(栄養の蓄積量),K:肥満度、C:クロロフィルa濃度(生きている藻類の量),  P:フェオ色素濃度(死んだ藻類の量)

波及効果

  1.  アサリの餌料環境測定法の基礎となる手法として利用可能。
  2.  アサリの栄養状態(身入り)に餌料環境が与える影響を明らかにするための基礎情報として利用可能。
  3.  アサリの成長・生残を餌料環境の側面から調査するための基礎情報として利用可能。

研究協力機関:静岡県水産試験場,愛知県水産試験場,熊本県水産研究センター,瀬戸内海区水産研究所
問い合わせ先:浅海増殖部 浅海生態系研究室(渡部)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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