海洋生物資源の
公共財としての性格と
漁業管理施策
背景と目的
 漁業管理施策のあり方を考える場合,海洋生物資源が有する公共財としての性格をどのように把握するかが重要なポイントとなる。
 例えば,下図に示したように,「技術」は,排除可能性が小さく非競合性は大きいので,純粋公共財に位置づけることが出来る。「地球環境」は,排除可能性は小さいものの,非競合性が「限りあるもの」とされるようになり,近年では共有財に近い公共財に位置づけられている。海洋生物資源はそれがオープンアクセスの対象か,リミットエントリーの対象かにより,公共財としての性格を異にしている(前者は共有財,後者はクラブ財)。

成  果

  1. 日本の沖合域海洋生物資源は,公共財供給への貢献や施策としての占有可能性の程度では「地球環境」と,供給条件の変動の程度(図1の縦軸)では「技術」と類似している。
  2. 公共財供給の動態的効率性は供給条件の変動の大きさ(図1の左縦軸)と時間スケール(図1の右縦軸)に対応し,温暖化ガス規制(「地球環境」)では相対的に小さくてよいが,特許制度(「技術」)や漁業管理制度(「海洋生物資源」)では大きくする必要がある。
    供給条件の変動の程度に即した効率性
  3. 漁業管理においては理論的には,例えば再生産条件が良好であった産卵親魚資源を獲り控えた(=供給の動態的効率性の増大に貢献した)漁業者に対しては,その子世代資源への占有可能性を高めることを考慮すべきである。

図1.公共財の性格(従来の排除可能性と非競合性の他に供給条件変動の軸を加えた)

波及効果
 海洋生物資源の管理について,他分野と共通した公共財供給の視点からの施策研究が可能となる。

問い合わせ先: 水産経済部 漁業管理研究室(三谷)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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