研究の動き
継代保存しているサクラマスの免疫と成長の特性を調べる
-血中の免疫グロブリンの濃度に与える遺伝因子および環境因子の影響-
背景と目的
成長が早く,病気に強い健康な魚づくりは,養殖生産の効率アップに極めて重要である。これまでに,サケマス類の成長は,生息密度や水の流れなどといった環境の違いや,系統や家系といった遺伝的な違いにも左右されることを明らかにしてきた。それでは,魚の健康状態は環境や遺伝的特性の違いによってどのような影響を受けるであろうか。そこで,病原菌から体を護る働きをもつ免疫グロブリン(IgM)の血液中の濃度に着目して,環境や遺伝的特性の異なるサクラマスを用いてその違いについて調べた。
図1
図1.サクラマス♂成熟魚の流水刺激別(左)および家系別(右)血中IgM濃度.Cont: 対照区,DT-6h: 昼間6時間流水付与,ME-6h: 朝夕合計6時間流水付与,24h:24時間連続流水付与.異なるアルファベット文字は有意差(p<0.05)が認められたことを示す。

図2
図2.サクラマス♀未成熟魚(左)と♂成熟魚(右)の血中IgM変動における家系および水流の寄与率.流水刺激付与後160日目と360日目の結果を示す。

成 果
  1. 毎秒1尾叉長分の流速水を朝夕合計6時間付与された魚と24時間連続で付与された魚のIgM濃度は,対照区に比べて顕著に上昇した(図1左) 。
  2. 一方, IgM濃度は,家系によっても有意に異なった(図1右)。
  3. このように,サクラマスのIgM濃度は,環境や遺伝的特性の違いを大きく反映することが明らかとなった。
  4. IgM濃度変動に与える家系(遺伝)および水流(環境)の影響度合いを寄与率として♀未熟魚と♂成熟魚で調べたところ,どちらの魚においても,環境因子付与期間が長いほど,同因子の影響力が高まることがわかった(図2)。
波及効果
 本研究成果は,健康魚の育成を目指した優良系統魚の選抜へ応用可能であり,育種技術の向上に貢献する。
問い合わせ先:内水面研究部 育成生理研究室(東)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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