研究の動き
アユの親魚の密度が卵や子アユの生き残りに与える影響
背景と目的
 アユにおいて,卵から子アユが育ち,また産卵するというサイクルの中で,それらの数を保つ,あるいは減ったものを回復させるために,漁獲の規制や産卵場の保護や造成が有効とされている。しかし,実際にどれ位の数の親を残せばどれ位の子アユが海域に加入するかは分かっていない。
 そこで,産卵から餌の摂り始めまでの発育段階で減る様子を調べ,その中で親の数に依存しているものを,野外および実験的手法を用いて洗い出すことにより,親と子の量的な関係を明らかにする。
図1
図2
成 果
  1. アユの雌雄の比を1:1とし,雌の密度を6段階に設定した人工の産卵床を設けた。その結果,密度が高いほど産卵率が低くなり,雌親1尾当たりの産卵数は減った。総産卵数の方は,増加して32尾/m2で最大に達し,64尾以上で激減した。また,高い密度では卵のままで死亡したり,はがれ落ちる卵数が増える傾向にあった。川を下る子アユの総数は,32尾/m2まではほぼ直線的に増加し,64尾以上で激減した(図1)。
  2. アユの雌雄比を4段階 に調整した人工の産卵床を設けた。その結果,雄の比率が低いほど,産卵率,雌親当たりの産卵数および総産卵数が減り,卵のままでの死亡が増えた。このことは,アユの産卵親魚の保護では,雌親だけではなく雄親も対象とする必要性を示している(図2)。
  3. 山形県の鼠ヶ関川のアユをモデルとして,親魚数,成熟状況,川に下った子アユの数等を調査した。親魚の成熟・産卵状況から産卵率はほぼ100%と見なされた。総産卵数は雌親の現存量と体重あたりの産卵数から計算した。産卵場(約100m2)における親の密度は,最大でも20 尾/m2と推定された。この範囲では親の数と卵数,川を下る子アユの数,卵の生き残り率の間に相関は認められず,親の密度に依存する要因は見られなかった。卵での死亡原因として,生理的な失調(ふ化率60%程度),卵がはがれ落ちる現象,さらにアユの親魚やウグイによって卵が食べられてしまうことが確認された。
波及効果
 親魚の過密は子アユの総数を減らす。鼠ヶ関川では,親アユの数に比べて,産卵場は十分に大きいと考えられたが,産卵の場が限られた場所では親魚の密度に留意する必要がある。
協力機関: 山形県内水面水産試験場
問い合わせ先:内水面研究部 資源生態研究室(内田)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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