研究の動き
海洋性食中毒菌ビブリオ・バリニフィカスの分布動態の解明
図1
図1.ビブリオ・バルニフィカスの
電子顕微鏡写真
背景と目的
 大規模な食中毒事故や食品流通の多様化を背景に,食品の安全性に対する関心は高まっており,その安全性確保には,食中毒菌等の危害因子の分布や動態に関する情報が重要である。
 海洋性の食中毒細菌ビブリオ・バリニフィカス(図1)は,健常者には病原性を示さないが,慢性肝臓病患者には重篤な感染症を起こすため,高齢化が進んでいる欧米先進国では強い関心を集めている。国内における本菌の分布はもちろんのこと,わが国との水産物流通がさかんな周辺諸国における分布動態も安全性確保のために不可欠な情報である。
成 果
  1. 初夏から秋にかけて,卸売市場(中国・上海市)で,活魚流通する魚類・貝類・甲殻類11種48試料を入手し,ビブリオ・バリニフィカスの存在を検討したところ,16試料から本菌が検出された。また活魚槽内の水からも本菌が検出された。
  2. 活甲殻類について,体各部位別のバルニフィカス菌数を測定したところ,菌のほとんどが体表上(甲殻)に存在していたが,一部の個体では無菌的に採取した筋肉部分(可食部)からも低レベルではあるが検出された(表1)。
  3. 分離したバルニフィカス菌はその生化学的性状からタイプ1に分別され,ヒトへの危害因子となりうるが,調査対象の魚介類は,すべて加熱調理後喫食されるため健康被害が発生するおそれはない。しかし流通過程や調理場で他の食品を汚染する可能性や生食・半調理品への嗜好が高まっていることを考えると,今後これらの水産物のバルニフィカス菌汚染レベルを低減化することが必要である。
表1 上海卸売市場で活魚流通する甲殻類の
部位別ビブリオ・バルニフィカス菌数

部位試験数陽性数菌数(log MPN/g)

全体445.3 (4.1-5.7)
頭胸部444.4 (3.6-4.6)
甲殻445.2 (3.9-5.6)
筋肉741.4 (0-2.0)

波及効果
  1. 水産物生産・流通現場への注意喚起と改善
  2. アジア地域水産物の安全性向上
  3. 輸入水産物の安全性確保
問い合わせ先:利用加工部 食品安全研究室(矢野)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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