研究の動き
千島・アリューシャン列島海峡付近における
海面水温の長期変動
図1
図1.地球の自転軸と月と太陽の軌道

図2
図2.AL2月SST偏差と月の章動

背景と目的
 月の軌道(白道)と太陽の軌道(黄道)の傾斜角が18.6年周期で変動し,地軸が振れる現象を「月の章動」(図1)といい,国内では有明海湾奥部の年平均潮差,海外ではアラスカ地方の気温やバレンツ海の生物量の経年変化を通して見ることができる。
 月の章動が海洋潮汐に及ぼす影響としては,月の赤緯(白道面と赤道面の角度)が大きいとき,月の軌道面傾斜による潮汐成分(日周潮)は大きくなり,半日周潮は小さくなることが挙げられる。日周潮・長周期潮が比較的大きい中・高緯度海域においては,更に振幅が増加すると考えられる。
 海洋潮汐混合が卓越する中・高緯度の海峡付近の海域では,大気の影響を取り除けば海面水温(SST)においても18.6年周期変動が見られると予測されるが,未だ確認されていない。そこで,本研究では千島列島(KL)とアリューシャン列島(AL)の海峡付近におけるSST経年変化を解析し,月の章動の影響を調査した。
成 果
  1. 大気の影響を取り除いたSST長期経年変化をみると,KLとALともに,8月と2月で約20年変動が顕著であった(図2)。また,両海域とも8月と2月では逆位相であり,例えば8月の水温極小と2月の水温極大の年は,K1分潮とO1分潮が大きくM2分潮が小さい年に相当する1950年代初め~1970年代初め・1980年代終わりと一致していた(図2)。
  2. 8月と2月のSSTの変化率と海面での海水からと大気からの熱の収支との間の関係はほとんど無相関であった(図略)。このことはSSTの約20年変動の原因が海面付近の熱交換によるものではないことを示唆する。従って,図2の説明としては,冬季は大気から海表面が冷却されるのに対して,より下層の高温な海水が月の章動に起因する18.6年周期の潮汐混合によって海面に輸送されるため,潮汐混合の強い年(1950年代初め・1970年代初め~980年代終わり)にSSTが上昇した結果と考えられる。
  3. 以上の解析事実は,KL・AL海峡付近で潮汐18.6年周期変動が実際に起きていることを支持する。
波及効果
千島列島(KL)とアリューシャン列島(AL)の海峡付近の水塊特性を色濃く残す親潮域では,動物プランクトン群集や魚類の経年変化との関係が注目される。
問い合わせ先:資源評価部 資源動態研究室(能登)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

PDF版へ

研究の動きへ

top中央水産研究所日本語ホームページへ