研究の動き
黒潮続流域に出現する冷水渦の実態を把握する
背景と目的
 黒潮続流域は水産資源の再生産に重要な海域であるが,海洋動態は十分に把握されていない。さらに,冷水渦は栄養塩や動植物プランクトンの輸送を引き起こし,再生産過程に影響を及ぼす。
 そこで,実態把握のための数値モデリング技術の精度向上を目指す。
成 果
  1. 2005年4月房総半島以東の黒潮続流域で切離した冷水渦を,蒼鷹丸で観測した。この冷水渦は,空間規模は小さめ,流速は大きめであった。
  2. 冷水渦がとり込んだ亜寒帯海域の水塊を保持・輸送している様子を捉えた。渦内部は低温・低塩分の水で占められていて,中心付近の鉛直方向に水温・塩分の変化が大きい躍層は200m深まで上昇していた。躍層上部には水温15~16℃,塩分34.4~34.5の均質な水,躍層下部には塩分34の分厚い水塊が存在した(図1)。
  3. 冷水渦の渦流は,海面付近で強く,深度が増すにつれて弱くなっていた。水平的には,渦流の大きさは中心付近で弱く,中心から離れるにつれて増大し,半径60km付近で120 cm/秒に達した後,さらに遠方では急速に弱まるという分布であった(図2)。
図1
図1.冷水渦の南北断面
(左:水温,右:塩分)
図2
図2.冷水渦に伴う渦流
波及効果
  1. 観測資料の蓄積により,黒潮続流域の海洋動態の理論的研究が促進される。
  2. 海況予測システムFRA-JCOPEによる海況再現性を確認するための基礎資料となる。
  3. 海洋調査関係機関に海況情報を迅速に提供する。
協力機関:独立行政法人海洋研究開発機構,中央ブロック水産業関係試験研究機関
問い合わせ先:海洋生産部上席研究員(渡邊)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

PDF版へ

研究の動きへ

top中央水産研究所日本語ホームページへ