研究の動き
TAC制下における漁業経営者の意思決定基準
背景と目的
 TAC制(特定水産資源の漁獲量の上限を設定する管理制度)に基づく漁業管理の円滑な実施方策を検討するためには,漁業経営者が漁業の目的として重視している要素やその判断基準を把握しておく必要がある。
 本研究では,まき網の漁業経営者を対象としてAHP(Analytic Hierarchy Process:階層化意思決定分析法)による調査を実施し,図1に示した四つの要素の重要度(優先度)を明らかにした。また、聞き取り調査において、その意思決定の判断基準を把握した。なお、AHPは、人間の勘や判断という曖昧な感覚を数値化して判断の優先度を評価できるという特徴を有している。
図1
図1.漁業の目的として重視する要素

図2
図2.漁業経営者の判断基準の重要度
成 果
  1.  漁業経営者が最も重視する要素は,「収益性」であった(図2)。これは,短期的な視点に基づくものであり,まき網漁業の経営が自転車操業的な内容であることの影響と考えられる。つまり,資源の持続的利用を目的としたTAC制漁業管理と,漁業経営の実態との間にはズレが生じている。
  2.  漁業経営者は,「持続的経営」を2番目に重視していた。これは,経営者も長期的視点を有することを示すものであり,TAC制の合意可能性を感じさせる。しかし,現状ではTAC制が資源量のみの議論であることに不満があり,資源量に加えて魚価動向も議論されないと経営判断が困難であるとの意見が多かった。
  3.  現時点においては,行政と漁業経営者間の合意形成が困難なのは,「資源の理論」と「経営の理論」による意思決定の違いが主な要因であると考えることができる。このズレを無くしていくことが,TAC制漁業管理の円滑的な実施に必要であろう。
問い合わせ先:水産経済部 経営システム研究室(大谷)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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