研究の動き
日本型順応的漁業管理の実物オプション分析
- 限られた知識の下で大失敗を避けるために -
背景と目的
 本研究では,効果的な漁業管理計画を立案・評価できる手法を構築するため,日本型漁業管理の制度的な特徴を検討してモデル化の際に考慮すべき要因を明確にするとともに,確率的動的計画法や実物オプション分析法等の意思決定支援理論に基づいて,将来予測が不確実であることを前提とした漁業管理理論を提示する。
成果
  1.  日本型漁業管理を数理モデルとして表現する際には,ITQ制度*のような上意下達的総量管理と自由競争の組み合わせという欧米において多く見られる方式ではなく,漁業者による柔軟な意思決定と合意形成という日本型漁業管理の特徴を明確に考慮した方式にする必要がある。 
  2.  ある施策の実施→日々の操業を通じてその施策の効果を学習→結果をその後の意思決定に反映→次の施策を逐次追加的に実施,という柔軟で順応的な漁業管理過程を,金融工学の手法(実物オプション分析)に基づいてモデル化した。
  3.  このような漁業管理により,漁家経営のリスクは大幅に削減されて漁業管理施策全体の価値が大幅に上昇すること(図1),その上昇幅は不確実性が高いほど大きくなること,また漁業者らの合意形成を促進するための指針を導出できること(図2),を明らかにした。  
図1
図1.最終的な期待利潤の累積確率分布
(赤字になるリスクは15%軽減された)
図2
図2.日々の操業でどういう結果が
出たらどう判断すべきか
波及効果
  1.  日本における漁業の制度的特徴と水産資源の不確実性を前提とした研究の促進が期待できる。
  2.  ITQ型漁業管理との比較分析を経て,漁業管理理論の一般化が期待できる。
ITQ(譲渡可能個別割当)制度:政府の設定する総許容漁獲量(TAC)を細かく分割して所有権を設定し,漁業者間で自由に売買させることを通じて効率的な水産資源利用を達成することを目的とした漁業管理手法。
問い合わせ先:水産経済部 漁業管理研究室(牧野)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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