東京湾の巨大アナゴの正体

浅海増殖部 資源増殖研究室・生物特性研究室

背景・目的
  1. 東京湾には全長1m以上の巨大な「クロアナゴ」が生息することが報道され話題となった(図1)。巨大なアナゴは新たな遊漁対象になる一方で、刺網を破る漁業被害が問題化した。
  2. 予備的に形態形質を調べたところクロアナゴよりもマアナゴに近い特徴を持っていた。そこで巨大アナゴの正体を明らかにするため、形態と分子の両面から種判別を試みた。
成果
  1. 東京湾の巨大アナゴは、日本産クロアナゴ属(Conger)4種のうちダイナンアナゴを除く3種(マアナゴ、クロアナゴ、キリアナゴ)のいずれとも異なる形態的特徴と分子系統関係を持つことが明らかとなり(図2)、上記3種のいずれでもないと結論された。
  2. ダイナンアナゴはクロアナゴの新参同物異名である可能性も指摘されていたが、巨大アナゴの形態はダイナンアナゴ(Conger erebennus Jordan et Snyder, 1901)の記載とほぼ一致することが明らかとなった。
  3. 以上のことから、東京湾の巨大アナゴはダイナンアナゴである可能性が高い。

図1 横浜市金沢区で釣獲された巨大アナゴ:全長108cm(左下は通常の漁獲サイズのマアナゴ)(拡大)


図2 巨大アナゴと日本産クロアナゴ属3種(マアナゴ、クロアナゴ、キリアナゴ)の分子系統(拡大)

波及効果

  1. 東京湾の重要種マアナゴを含む分類群の混乱が解消されることにより、より適切な資源管理が可能となる。
  2. 身近な海の疑問を解消することにより、多くの人に海に対する関心を持ってもらうきっかけとなる。
連絡先

 黒木 洋明・丹羽 健太郎  TEL : 046-856-9378

協力機関

 大阪市立自然史博物館、九州大学、東京都水産試験場、神奈川県水産技術センター  


nrifs-info@ml.affrc.go.jp

PDF版へ

目次へ

top中央水産研究所日本語ホームページへ