魚類の骨格・体節形成におけるストレスの影響解明
利用加工部 食品バイオテクノロジー研究室
背景・目的
1. 魚類胚は熱、放射線、紫外線、薬剤などのストレスに対する感受性が非常に高いことから、生体へのストレスの影響のメカニズムを解析する上で、重要なモデルとなる。
2. 発生、形態形成、性分化などの生命現象を魚類胚を用いて解析する。
3. 生体内でのアポトーシス細胞のDNA断片化を特異的に染色するTUNEL法で観察する手法を開発し、アポトーシス誘導の分子機構を解析した。
成果
1. ゼブラフィッシュおよびヒラメ胚を用いて、ストレス処理およびアポトーシス誘導剤C2セラミドの投与によるアポトーシス誘導を観察した。
2. ストレス条件で、目の小型化、膜鰭の崩壊、脊索の屈曲・彎曲などの形態異常が生じた。アポトーシスは組織特異的および発生段階特異的に生じることが分かった。

図1 蛍光TUNEL法によって染色されたゼブラフィッシュ胚のアポトーシス細胞
3. アポトーシス実行分子カスパーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックゼブラフィッシュを作出した。この胚では顕著なアポトーシスが誘導され、アポトーシス感受性のモデル生物として利用可能である。
波及効果
1. 魚類胚・魚類細胞におけるアポトーシスの分子機構が明らかとなり、発生、形態形成、性分化などの生命現象の理解に役立つ。
2. 水産加工残滓からアポトーシスの誘導剤や阻害剤として利用可能な生物活性物質のスクリーニングを現在進めている。今後、食品、医薬品、餌料などに利用できる素材開発に本手法を応用する。
連絡先
山下倫明
その他
特許 環境ストレス耐性を強化した魚類,特願2002-031384p
T. Yabu, Y. Ishibashi, and M. Yamashita Fish. Sci. 69, 1218-1223 (2003).
過剰なアポトーシスを生ずるトランスジェニック魚類,特願2002-154851

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